46話 似た者夫婦。
46話 似た者夫婦。
「なによりも、まずは、『助けていただいて、ありがとうございます、このご恩は忘れません』が最初だろ! なに、助けられておきながら、『そんなことは当然』みたいな顔して、登場速度に文句かましてんだ!」
文句を垂れる黒木に対し、
センは、続けて、
「理解しろ、バカども! 俺は頑張った! すごく頑張った! ご褒美を与えられることはあっても、文句をいわれる筋合いはない! そう断言できる程度には頑張った! はい、論破ぁああ!」
「言い訳をする時というのは、往々にして、『言い訳をしなければならない状況である』と認識している時であって、つまり、あなたは、『言い訳をしなければいけないほど自分に非があった』と認めたことになります。はい、論破」
冷徹な言葉を投げかけられて、
センは、普通にムっとした顔になり、
「……お前、性格悪いな。ウザいわぁ。軽く嫌いだわぁ」
ボソっとそうつぶやく。
彼女の『根本的な性格の悪さ』は、すでに、ある程度理解しているつもりだったが、しかし、人間と言うのは、理解しているからといって、素直に受けいれられるものではなく、むしろ、あらためて思い知ることで、無駄な反発心が沸いて出たりしてしまうもの。
ほとほと厄介な観念の集合体。
それが人間。
弱い命の代表。
「私の性格がクソなのは、まったくその通りなのですが、しかし、あなたほどではないかと」
「いやいや、黒木さん。ははっ」
「――『またまたご冗談を』みたいな感じで笑うのをやめていただいていいですか? あなたのそういうところ、ツミカさんに、少し似ていますね」
「はぁ?! ハァアアアア?! お前っ、あろうことか、この俺を、そこのサイコボマーと同列扱いするとか! ハァアアアアアアアアア?!」
ワナワナと全身を震わせて、
「よくも、俺が守ってきた最後の魂を穢したな! もはや、是非もなし! 法廷で会おう!」
ブチ切れるセンの横で、
茶柱が、
「マナてぃん、さすがに聞き捨てならないにゃ。ツミカさんのような、『清廉潔白品行方正情緒安定の美少女』と、こんな『ハイス〇ール奇面組一番隊総長みたいな男』を一緒くたにするなんて、あんまりにゃ。訴訟も辞さない構えにゃ」
「ほら、よく似ているじゃないですか」
などという、無駄にバチバチした言い争いを経ている間、
ガタノトーアは、一歩も動けず、フルフルと震えていた。
「……な、なんだ、あの人間……ヤバい……ヤバすぎる……本当に人間か? いや、人間ではない……人間の器ではない……」
そんな、ガタノトーアのつぶやきを耳にした茶柱は、
ウッキウキの顔で、
「ほらほら、奇怪なGOOですら、こちらのセンセーに対して、『人間の顔じゃない、キモすぎる』って感想を抱いているにゃ。そんな奇面組総長と、ツミカさんを同列扱いしたことを、とにもかくにも謝ってほしいにゃ。はい、土・下・座、はい、土・下・座」
「土下座をしないといけないのはお前だ。俺の顔面偏差値が50を下回っているのは認めるが、しかし、さすがに、奇面組でセンターを張れるほどの奇天烈なコミカルさは有してねぇ」
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