3話 田中トウシには何もない?


 3話 田中トウシには何もない?


「お前の頭があって、今の説明で分からないとかありえないだろうが。煽ってくるんじゃねぇ」


(いや、ほんとに、よく、分からないんだけど……軽くウトウトしていて、話、半分にしか聞いてなかったし……)


 そんな煽り厨を置き去りにして、

 マザコン熾天使と厨二死神は会話を続ける。


「ヨグの次元ロックをかいくぐって過去に飛ばせたのは、『センエースの中にある田中トウシの記憶』だけ。つまり、『一週間先の情報』はない。当然、これまでに回収した銀の鍵もな。そして、センは、『田中トウシが武芸に秀でている』という記憶をもっていないから、あの田中トウシは、当然、高い戦闘力などもっていない。さっき言ったように、『純正の携帯ドラゴン』と契約することもできない」


「……やばいねっ♪ 低位のGOOにすら勝てなくなくなくないっ?」


「正面切って殴り合えば、一瞬で消し炭にされるだろうぜ。正直な話、この状況で『田中トウシ』に何かできるとは思えない。田中トウシが、全世界の全歴史上で唯一、『センエースの心を折ったこと』がある、人外級の天才なのは知っているが、だからって、どうにかなる状況だとは思えねぇ」



 ★



 奇妙な状況に対して、

 いまだ、困惑が止まらないトウシだが、

 しかし、『学校にはいくべきである』という、

 謎の強迫観念に押されて、

 普通に登校することになった。


 問題なく学校に到着し、自分の席につくトウシ。

 ここまでの道中でも、『違和感』は山のようにあった。


 自分が『この学校に通っていた』という記憶はあるのだが、

 しかし、その『痕跡』のようなものがない。


 ゼロではない、というか、

 『取り繕ったような、急ごしらえの証拠らしきもの』はあるのだが、

 どうしても、空虚な空っぽ感が否めない。


(どう考えても、おかしい……そもそも、ワシのレベルで、このランクの高校に通っとる意味がわからん……まあ、意味が分からんで言うと、あいつらも、なんで、こんな学校におるんかって話やけど……)


 心の中でそうつぶやきながら、

 トウシは、チラっと『彼女たち』に視線を向けた。



「ミレー、珍しいなぁ。あんたが遅刻してへんとか、どんな奇跡?」

「トコ。私は生まれてこの方、遅刻なんてしたことないわ」



 煌びやかで、華やかで、

 けれど、それだけではない、

 一種の『トゲトゲしさ』が散見される彼女たち。


 『K5』と呼ばれている金持ち美少女グループ。

 K5の表向きの意味は『綺麗な5人』だが、

 本当の意味は『キ〇ガイ5人組』。



 彼女たちの異常な会話に耳を傾けていると、

 そこで、


「あまり、ジロジロ見ていると、『親衛隊』の連中に、脊髄を持っていかれるぞ」


 と、声をかけてきたのは、

 モブ感が強い男子高校生『蓮手(はすて)』。

 中肉中背で、黒髪。

 際立った特徴が一ミリもない、

 『平々凡々』という概念を具現化したような男。


「……見とっただけで中枢をもっていかれんのかい。そこまでいくと、もはや、ただの過激なテロリズムやな」

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