4話 何もかも、おそろしく不自然。
4話 何もかも、おそろしく不自然。
「……見とっただけで中枢をもっていかれんのかい。そこまでいくと、もはや、ただの過激なテロリズムやな」
「俺たちは『偶然、同じクラスになった』というだけで、親衛隊の連中から、羨望と嫉妬の眼差しを受けているんだ。もし、『K5を狙っている』なんて、あらぬ誤解を受けたら、やつらに、何をされるか、マジで分かったもんじゃねぇ。言動には気をつけた方がいい」
「なんで、学校生活で、そんなことに気を使わなあかんねん……だっるいわぁ……」
などと言いながらも、
トウシは、蓮手に違和感を覚えていた。
(……なんか……こいつ……奇妙やな……)
それは、単なる感覚の話ではない。
具体的な違和感。
(視線の配り方、手足の挙動……全部、おかしい……そもそも、なんや、こいつの骨格、めちゃくちゃ不自然やな……ほんまに人間か……?)
何もかもが奇妙だった。
パっと見は普通の人間に見えなくもないが、
どうにも、多角的に不自然。
簡単に言うと、まるで、
『平均的なパーツ』を寄せ集めて組み立てた人型ロボットみたいに感じた。
人間とは、絶対的に、何か一つぐらいは『歪な特徴』を有しているもの。
『完璧に普通の人間』など存在しない。
だが、蓮手の造形は、普通すぎて、不自然だった。
不自然なところがなさすぎて、不自然だったのだ。
(……なんか、やばいで、これ……この学校自体も……なんか、いろいろおかしいねんなぁ……)
まず、あちこちに『過度な修繕の跡』がみられる。
大勢の人間が頻繁に利用する建物やグラウンドが痛むのは当然だが、
しかし、この学校では、
『普通ではない痛み方』と、
『普通ではない補修の跡』がみられる。
(……あえて例えるなら戦場……爆発とか、流血とか、そういう、血なまぐさい痕跡を、『莫大な金と労力』で強引に消し去ったような……そんな、仰々しい雰囲気を感じる……)
もちろん、ぱっと見では、その『異常性』に気づくことは不可能。
類稀なる洞察力と観察眼を持つトウシだから気づけた違和感。
(なんか、ヤバいことになりそうな気がしてならんのやけど……)
クラスメイトも学校も、何もかもが異常なスクール生活。
トウシは、そこで、つい、天を仰いで、
(……ずっと、胸がザワザワしとる……嫌やなぁ……勘弁してほしい……)
そこそこ明確なシルエットを持つ不安を胸に抱えてビビリ散らかしていると、
そこで、教室のドアが開いて、担任の教師が入ってきた。
「はいはいはい、みんな、席に着こーか! みんなのアゲセンがきたから、席につこーか」
出席簿片手に元気溌剌(げんきはつらつ)な若い男性教師。
『挙茂(あげも) 悟(さとる)』。
27歳、独身。
黒髪短髪かつ中肉中背で、ほんのり肌が浅黒い。
見た目だけは、どこにでもいる、普通の若い教師。
彼の元気のいい声に従って、
『特に不真面目でもない生徒たち』は、
いそいそと自分の席に戻っていく。
「はい、全員、席についたかなー……って、あれ? 茶柱は……」
茶柱が布団をしいて寝ていることに気づいたアゲセンは、
「……あのボケ……また挑戦的なマネしやがって……」
正当な怒りを拳にこめて、
茶柱の頭にふりおろす。
ピーピーわめく茶柱と、
それを力づくで抑えるアゲセン。
そんな光景を尻目に、
トウシは、
(あのオッサンも、なんか妙やな……服でうまく隠しとるけど、バッキバキの体しとるやないか……というか、そもそもの雰囲気が、ただごとやないんやけど……なんというか、張り詰めた剣豪的な空気感をかもしだしとる……)
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