5話 変態ばかりの学校生活。


 5話 変態ばかりの学校生活。


(あのオッサンも、なんか妙やな……服でうまく隠しとるけど、バッキバキの体しとるやないか……というか、そもそもの雰囲気が、ただごとやないんやけど……なんというか、張り詰めた剣豪的な空気感をかもしだしとる……)


 『命のやりとり』を日常にオールセットしている者の空気感。

 足運び、呼吸、視線の強度と彷徨い方。

 何もかもが、『常人ではない』と叫んでいる。


 これも、また、一般人では気づけない。

 卓越した観察眼だけが見抜ける境地。



(ほんまに、やばいて、この学校……変態ばっかりや……)




 ★



 朝のホームルームで、

 主体性遠足の班割りが決められ、

 トウシは、紅院たちの班にぶちこまれることになった。


 そして、一限目の『倫理』は、

 そのまま、主体性遠足の話し合いに使われることになった。


「まず、今回の遠足における、この班の『代表』を決めたいのだけれど」


 紅院の発言によって、

 代表決めジャンケンが行われることになった。


「文句なしの一回勝負。はい、ジャーンケーン……」


 ――その結果、


「……ワシか……まあ、ええけど……」


 トウシに決まったことで、

 トコが、ホっとした顔になり、


「あー、よかったぁ……代表とか、絶対にやりたなかったから。いやぁ、助かったわ」


 安堵を口にする。

 そんなトコを横目に、紅院が、

 トウシの肩に、軽くポンと手を置いて、


「正式なジャンケンで決まったことだから、文句は言わさない。代表としての役割、シッカリと頼んだわよ」


「……別に文句をいうつもりはない。お前らが結託して、ワシに面倒事を押し付けた、みたいな感じやったら、意地でも絶対にやらへんけど……マジで正式に公平なジャンケンやったしな」


 その言葉に違和感を覚えた『黒木学美』が、


「正式だったかどうかなんて、どうしてわかるんですか? もしかしたら、私たちが、裏で結託していたかもしれませんよ?」


「相手をハメようとするやつには、特有の仕草がみられる。視線の動きやったり、呼吸のテンポやったり、筋肉の動き方であったり……別に、100%の確率で見抜けるわけやないけど、四人全員が、完璧に、その辺の調節ができるとは思えへん。仮に、完璧な手口でワシをハメたんやったら、それはそれで、称賛に値するから、拍手の代わりに、面倒事を背負ったる」


「……今まで話したことがなかったので知りませんでしたが……あなたって、無駄に理屈っぽくて、めちゃくちゃ面倒くさそうな男ですね……」


「……なんやろう……『お前にだけは言われたぁない』と強く思う」


 そこで、トウシは、K5の面々を一瞥(いちべつ)して、


「というか、お前ら、ワシに対して、案外、普通に接するんやな――『ワシが、お前らのグループに混ざっとる』という事に対して、もっと嫌がられると思っとったけど」


 そこで、トコが、サラっと、


「そっちから近づいてきたなら、そら、払わせてもらうけど、今回の場合は、むしろ、そっちが被害者みたいなもんやからなぁ……あたしらの事情に巻き込まれて、厄介な状態になっとるんは理解できとる。逆の立場やったらと考えたら、しんどぉて、しゃーない」


(……鬱陶しいだけのクソお嬢様集団かと思ったけど……案外、まともな連中なんかな……)

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