6話 根拠は。


 6話 根拠は。


(……鬱陶しいだけのクソお嬢様集団かと思ったけど……案外、まともな連中なんかな……)


 などと、思っていると、

 そこで、トコが、続けて、


「あたしらはアホやないねん。事情と理由を加味した上で、あたしらは自分らの言動を選択しとる。せやから、遠足の間だけは、あんたのことを、普通に、班のメンツとして扱わせてもらう。ただし、そんなあたしらの『あんたに対する配慮』を『特別な好意』と勘違いするようやったら、徹底的に叩き潰す。……『迂遠な言い方』はやめて、もう、今のうちに、直接言うとこか。あたしらに惚れんな。絶対に。もし、勘違いして告白とかしてきたら、一瞬で振るし、その後は、永遠にシカトさせてもらう。理解できた?」


「……心配せんでも、お前らはタイプやない。ワシの趣味は、もっと、こう……って、ワシの好みはどうでもええ。そもそも、前提として、ワシが、女に告白とか、絶対にありえへんわけで――」


 そこで、それまで黙っていた茶柱が、

 ススっと、前のめりになって、


「おやおや、もしかして、ゲイなのかにゃ? BL系男子なのかにゃ?」


「ワシの染色体に、そっち系の異常はない。系統の違う異常やったら、そこそこ、あるかもしれんけど」


「どういう系統の異常があるのかにゃ? 将来、ハゲ散らかすとか、そういう系かにゃ?」


「それは異常とは言わへん。統計学的視点で見れば、むしろ、普通や。男の場合、ハゲる率の方が高いからのう」


「屁理屈ばっかり並べ立てて……ツミカさん、あんたのこと、好きじゃないにゃぁ」


「よかった。ほんまによかった。お前みたいな、意味不明のキ〇ガイに好かれてもうたら、人生おわりやからなぁ」


 バッサリとそう言い捨てたトウシに、

 トコが拍手をしてみせる。


「よういうた、田中。その変態に、もっと言うたれ。なんやったら、絞め殺してもかまへんで。おっても邪魔なだけやから」


「……親衛隊に脊髄をもっていかれたくないから遠慮しとく」


「トコてぃん、こんなことを言っているけど、ほんとは、ツミカさんのことが大好きなんだよにゃぁ。本心を隠すために、こうして、トゲトゲしい言葉を使うけど、本当は、ツミカさんのことが大好きなんだにゃ」


「なにを根拠に、ふざけたことを……あんまりエエ加減なことばっかり言うとったら、全力の訴訟も辞さへんで」


「根拠は、この前のGOOとの闘いにゃ。敵の魔法で、ツミカさんがダメージをくらいそうになった時、トコてぃんが、普通に、その身をていして、かばって――」


 そこで、トコが、

 茶柱の口をふさいで、


「――おっ、おどれ、ごらぁ! 人前で、何言うてんねん……っ!」


 迅速な対応をとるトコを援護するように、

 紅院が、


「ま、ま、まったく、罪華は、本当に、いつも、いつも、わけの分からないことばかりほざいて。正気とは思えないわね」


 さらに、黒木も援護にくわわる。

 紅院たちとは違い、できるだけ冷静な声で、


「奇妙な妄言を垂れ流すのはやめていただきたいですね」

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