30話 これが! おれが身をすててまもろうとした人間の正体か!


 30話 これが! おれが身をすててまもろうとした人間の正体か!


「――『貢いでくる男』のことは虫ケラのように扱うが、『自分が貢いだホスト』のことは王子様のように扱う。特に、出来のいい女ほど、母性や支配欲や独占欲が強く、ダメな男を好む傾向にある)


「女、キモイぃい! ちゃんとした男だけ、好きになれよぉお!」


(男もたいがい、気持ち悪いと思うがな。女を選ぶ基準で『胸が大きければ、中身はどうでもいい』という男が、全体の30%を占めている)


「男も女も終わっていやがる! 人間、クソだな! 俺、このままだと、なんか、デビ〇マンになりそうだ!」


 センが、世の理不尽をなげいていると、

 ムーンビーストが召喚されたので、

 憂さ晴らしの神速ワンパンで処理。


 そのままの流れで召喚されたウムルも、

 サクっと処理。

 壊れたウムルも秒で処理したところで、

 センはかるく屈伸をしながら、


「さて……それじゃあ、気合いれていこうか」


 準備運動を終えたセンの前に、

 『センエースエンジン搭載型ウムル』が召喚された。


 強力な携帯ドラゴンを得た今のセンなら楽勝――

 というわけでは、もちろんない。

 難易度爆上げスイッチの特性は、

 『センが強くなればなるほど、敵も強くなる』というもの。


 さらに、携帯ドラゴンによって強化された分、

 センエースエンジン搭載型ウムルも強くなる。


 ウムルサイドも、普通に、


「アベル……来い」


 携帯ドラゴンを召喚して、


「トランスフォーム・モードディアベル」


 がっつりとトランスフォームをかましてくる。

 底上げされた強さは堅牢。

 悪魔を彷彿とさせる鎧。

 基本的には魔獣スタイルなのだが、

 どこかで、『戦闘タイプの昆虫』を思わせるフォルム。


 硬質な翼をはためかせ、

 ギラつく瞳でセンを射貫く。


 ――結果、死闘の泥試合。

 極限を超えた血みどろの殴り合いが続く。


(もぉお……このウムル、ウザいぐらい強いぃ……下手したら、死ぬぅ……だるいぃ……っ)


 『センエースの特性を受け継いだウムル』は、

 とんでもなく強い化け物で、

 わずかなダメージを与えるだけでも、めちゃくちゃ苦労する相手。

 そこに携帯ドラゴンの底上げまで加わっているので、

 普通に凶悪すぎる相手。


 ただ、センだって強化されている。

 アホみたいに積み重ねてきた。

 その質量が、ウムルに後れを取ることはない。


 これまでに積み重ねてきた全てを惜しみなく駆使するセン。

 実質的なフェイントに、精神的なフェイントを織り交ぜて、

 軽やかに相手の攻撃をいなしつつ、

 魂魄の死角を狙いすまして、



「理円(りえん)・絶華(ぜっか)・煉獄一閃(れんごくいっせん)」



 閃拳すらもフェイントに使い、

 ひそかに溜めていたオーラを、

 亜空間にセットしておいた図虚空に注ぎ込み、

 ウムルの中心を両断してみせた。


「はぁ、はぁ、はぁ……勝ったぞ、おらぁ……ナメんなよ、クソが……」


 普通に満身創痍になりながらも、

 センは、ウムルに勝利した。


 その結果、10000倍の経験値が、携帯ドラゴンに注がれる。

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