11話 努力の結晶。
11話 努力の結晶。
「これまで、貴様に猶予をやったのは、『どうせ、妨害しても、それを糧にして、より鬱陶しく覚醒するだけだろう』と思ったから。しかし、本当に『今のまま』で終わるだけのクソムシなのであれば……」
そこで、オーラを練り上げていく。
すさまじい覇気で、センを威圧する。
「私もヒマではない。いつまでも、ダラダラと、クソムシの相手をしていられるほど余裕はない。私には、主上様に代わって、ゼノリカ全体を監視・指導するという役割がある」
最後にそう言い捨てると、
アダムは、空間を跳躍した。
美しい武だと、
センは、心の底から思った。
アダムの武には、正直、まだまだ、甘い部分もあった。
『完璧に磨き上げられている』というワケではなかった。
しかし、その発展途上感が、彼女自身の美しさと相まって、
まるで、どこぞの『腕のない女神像』のように、
不完全性の美を、これでもかと演出していた。
アダムはすでに、ありえないほど強いが、
しかし、彼女はまだまだ強くなる。
それが理解できたから、
センは、
(……美しい……)
ただ、感嘆した。
脳が震えている。
快楽につながるホルモンがドバドバとあふれ出る。
そんなセンの腹部を、
アダムは、容赦なく、自身の右腕で貫いた。
「ご……ほっ……っ」
「ついさっき、ヒマではないと言ったばかりだが……しかし、必要とあれば、とことん付き合ってやる。杓子定規(しゃくしじょうぎ)に物事を判断したりはしない。すべては優先順位の問題。何度でも復活するがいい。とことん殺しきってやる。私の前で、主上様のパチモンを名乗ったことを、全力で後悔させてやる」
『絶対に揺るがない』という意志を、
全身全霊で示してくる彼女に、
センは、濃い血を吐きながら、
「つ……強いなぁ……アダム……あんたにゃ勝てねぇ……あんたは強すぎる……それだけ強いのに……まだまだ余白を残しているところが……なにより怖ぇ……」
「パチモンのくせに真理が見えているじゃないか。その通り。私は、まだまだ強くなる。永遠に強くなり続けて、私は、永遠に、主上様の隣に立ち続ける。それが、私の、主上様に対する愛の形」
「クソ重い愛だな……けど、どこかで、うらやましいと感じている俺がいる……お前にそこまで愛されている主上様とやらが……普通に妬ましい」
「貴様らパチモンは、いつだってそうだな。主上様の全てを物欲しそうに見つめているだけ。自分と主上様との差を『努力』で埋めようとはせず、無粋なチートに頼りっきりで厚みがない。だから、永遠に届かない」
そんな、
アダムの、
辛辣な言葉に対し、
センは、
『山ほどある言いたいこと』をかみしめたような表情で、
「……努力なら、してきたさ……」
ボソリと、
吐き出すように、
「……『それだけ』は……胸を張って言える……俺は頑張ってきた。結果を出さず、『努力だけ』を自慢するようになったら終わりだとは思っているが……しかし、誤認は流石に勘弁できねぇ。俺は、ずっと、誰よりも踏ん張って生きてきた……そこだけは……主上様とやらにも負けねぇよ」
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