56話 ワケわかんないんだけど!


 56話 ワケわかんないんだけど!


「は?! 急に、なに?! キモいんだけど!」


「仮に、私が負けても、お前が、あそこの変態に捕獲されるという未来に変わりはない。お前の未来も『絶死の悪夢』確定。ご愁傷様」


「ワケの分からないことばかり言わないでくれる?! ウザいんだけど! 死んで!」


 叫びながら、

 クティーラは、ガタノトーアとの距離をつめて、

 得意の高火力魔法を連打する。

 洗練された、鮮やかな一手。


 得意なのは魔法だけではない。

 物理も魔法も特殊も、だいたい、なんでも得意な戦闘のスペシャリスト。

 総合力と完成度では、数いるグレートオールドワンの中でも、

 最高格と言って過言ではない、美しいスペックの持ち主。


 クティーラは、非常に優秀な神格。

 もちろん、クティーラよりも『高い攻撃力』を持つGOOや、

 もっと『優れた生命力』を持つGOOは他にいるが、

 クティーラほど、

 『突破力の高い完成度の高いステータス』を有している者は、

 他に、なかなかいない。


 あえて、例えるなら、クティーラは、剣舞型のミミ〇キュ。

 対して、ガタノトーアは、龍舞ボ〇マンダ。


 普通に対峙すれば、やり方しだいで、

 ガタノトーアは、クティーラを殺すことも不可能ではない。

 しかし、現状だと、ガタノトーアは、

 『ひのこ』以外の技は禁止をくらっているような状態。


 ゆえに、勝てるわけがない。

 縛りの強度があまりにも高すぎる。


「ウチのマスターの狂気を知った今となっては、クティーラ、貴様ごときは、絶望と呼べるほどのものですらない」


 本音を口にしてから、

 ガタノトーアは、


「ただ、私が、貴様をどう思うかと、実際の戦局がどう傾くかの間に、さしたる相互性は存在しない。私が、この戦闘をヌルいと感じているからといって、この戦闘に勝てるわけではないという、世界のリアル。これが現実。絶対的な数学的真実」


 そんな言葉を前に置いたうえで、


「しかし、ウチのマスターなら、そんな、『クソみたいな結末をリアルだと思い込む勘違い』ごとブチ殺していきそうだが」


 などと、マスターに対する理解を口にした上で、

 最後の最後まで、

 ガタノトーアは、クティーラに立ち向かった。


 クティーラを殺してしまわぬように、

 自身に大きな縛りを設けた上で、

 必死になって、クティーラを半殺しにしようと立ち回る。


 だが、届かない。

 ガタノトーアの実力では、

 殲滅魔法を封じた上でクティーラを半殺しにすることはできなかった。


 ガタノトーアは、よく頑張った。

 『ひのこ』だけで、必死に削った。

 急所にあてて、『やけど』を引いて、回避を決めて。


 けれど、舞われて、何度もじゃれつかれれば、

 さすがに、体力が持つわけもなく、


 結果的には、そこまで大きく削ることもできないまま、

 ガタノトーアは、『ひんし』になってしまった。


「くははははは! なんか、ワケわかんない戯言を、ごちゃごちゃ言っていたけど、けっきょく、すっごく、よわいんだけど!」


「……そうだな……私は、まだ、抗い方を知らない。私が、今まで、強さだと思っていたものは、ただの数値で……本当の強さではなかった……」

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