57話 お強いですね、クティーラ様。


 57話 お強いですね、クティーラ様。


「私は、まだ、抗い方を知らない。私が、今まで、強さだと思っていたものは、ただの数値で……本当の強さではなかった……」


「は?! 何言ってんの?! 今日のあんた、ずっと、何言ってんのか、わかんないんだけど?! 死んで!」


「本当の強さなんてものを求めはじめたら、永遠の泥沼にハマって、地獄をさまよう羽目になる……イヤだ……しんどい……けど、どれだけ嘆いても逃げられない……ああ、最悪だ……」


 最後にそう言い残すと、

 ガタノトーアは、目を閉じて、しゃべるのをやめた。

 気絶したわけではないが、『もう動けない』ということを全身でアピールしている。


 機能停止したガタノトーアを尻目に、



「なんか、ずっとワケわかんないことをほざいていたわね……ま、どうでもいいけど!」



 本当に、心底から『どうでもよさそう』に、そう言うと、

 クティーラは、紅院たちに視線を向けて、


「さぁて……どうやって、ガタノトーアと契約したか知らないけど……もはや、最後の砦であるガタノトーアもいなくなったワケで! もう、あんたらは! 死ぬしかないわけだけど! 何か、遺言とかある?! 一言ずつくらいなら聞いてあげてもいいわよ! あたしは、寛大な女神だからね!」


 ふんぞり返って、そんなことを言うクティーラ。


 ガタノトーアをボコボコにできて、ほくほく顔。

 いい感じに暴れた後は、たいがい機嫌がよくなる。


 機嫌が悪いときは、めちゃくちゃ態度が悪い彼女だが、

 機嫌がいいときは、普通に温情を見せてくることもある、

 一辺倒に暴力的なわけでもなく、

 一辺倒に善良というわけでもない、

 そんな、『人間味』らしきものを感じなくもない神格。


 そんな奔放な彼女に、

 センは、


「いやぁ、お強いですねぇ、クティーラ様」


 と、軽く肩をまわしながら、声をかける。


「まさか、あのガタノトーアが、ここまでアッサリ倒されるとは思っていませんでしたよ。破格にお強い」


 そんなセンの言葉に、

 クティーラは、


「ふふん! 当然! あたしは女神の中の女神! 血統も資質も気品も、すべてがパーフェクトな超女神! あらゆる意味で、あたし以上の美しさは、この世に存在しないわ!」


 気分よさそうに胸を張って、大言壮語を吐き散らかすクティーラ。

 そんな彼女に、センは、


「ええ、ええ、そうでしょうとも、あなた様は非常に美しい」


 揉み手をしながら、おべっかを連発。


「あなた様こそ至高! オンリーワン以上のナンバーワン! あなたのスペックは天上天下唯我独尊!」


「ふふぅぅん! わかっているじゃない!」


「あなた様こそ、まさに、最高のポ〇モン! 使用率ナンバーワン級! 俺の手持ちにふさわしい!」


「そのとおり――って、ん?! 今、なんて?!」


「どうやら、スペックは高いが、耳は遠いようだな。――今日から、てめぇは、俺の手持ちだって言ってんだよ。めちゃめちゃコキ使っていく予定だから、そのつもりでよろしく」


 そう言いながら、センは、じっくりコトコトと魔力を底上げしていく。

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