58話 お前の罪を数えろ。


 58話 お前の罪を数えろ。


「どうやら、スペックは高いが、耳は遠いようだな。――今日から、てめぇは、俺の手持ちだって言ってんだよ。めちゃめちゃコキ使っていく予定だから、そのつもりでよろしく」


 そう言いながら、センは、じっくりコトコトと魔力を底上げしていく。


 『ガタノトーアを叩き潰した時』とは違う。

 極限の殺気で縛り付けたりせず、

 からみとるように、ねっとりと、自身の存在値を上げていく。


 その様子を見て、


「……へぇ……下等生物にしては、悪くないわね……ま、とはいえ、それは、下等生物にしてはマシってだけで、あたしと比べれば、足元にも及ばないけど!」


 そう言いながら、

 軽くオーラを練り上げ、


「このあたしを相手に、ずいぶんとナメた口をきいてくれたじゃない! 普通にイラついたわ! 多少は、慈悲をかけてあげようかなって思ったけど、やめやめ! あんたはこれから、凄惨に死ぬ! あたしが殺すぅ!」


 そう叫ぶと、爆発的に上昇したイライラを解消しようと、

 センの顔面に向かって拳をつきだす。


 跡形もなく、バラバラに爆散。

 そのイメージしか持っていなかったクティーラ。


 しかし、この世界の現実は、

 まったく違う結果を、

 彼女に提示する。



「え?」



 彼女に待っていた現実は、

 『ニヤニヤとわらっているセン』に、

 『楽勝で回避される』という不条理だった。


 クティーラは混乱する。

 理解ができなかった。


「なんで……よけられ……え?」


 今の彼女の視点では、

 センなど、C級GOO程度の数値しか持っていないザコ。


 実際、セン本体の『数字』だけに着目した場合、

 クティーラの足元にも及ばない雑魚である。


 ゆえに、


「偶然だ! たまたま! 奇跡! ただの幸運! 避けられるはずがない! このあたしの攻撃を! あんたみたいなカスが!」


 そう叫びながら、

 クティーラは、

 流れるような連打を放つ。


 無数の拳で、センをミンチにしようとする。

 マシンガンのような、その攻撃を、

 センは、鼻で笑いながら、


「――『クルルー・ニャルカスタム』、『スーパーセンエース』、『ヨグシャドー』……これまで戦ってきた『変態(アウターゴッド)ども』と比べれば、やっぱり、ずいぶんと、ちっちぇなぁ、クティーラ様よぉ」


 ヒラヒラと、あえて紙一重で、クティーラ様の攻撃を避けながら、


「まあ、『アウターゴッドと比べれば小さぇ』ってだけで、これまでに戦ってきた『GOOの中』では、間違いなく『最高』クラス。さすがに『俺の相手は務まらない』ってだけで、GOOの中では、相当に上位級。だからこそ、余計に実感する。アウターゴッドは格が違う。そこを超えるのは本当に難しい。だが、超えないと、世界が終わってしまう。だから――」



 そこで、センは出力をあげて、



「俺は貪欲に強さを求める。クティーラ・ヨグカスタム。これから先、てめぇは俺の力の一つ。俺の力にノイズはいらねぇ。全力で、高みを目指してもらう。イヤだと言っても聞いてやらねぇ。俺を相手に『殺す』とハシャいだギルティを、これから先の努力で償え」


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