59話 それが俺のサイコ道。


 59話 それが俺のサイコ道。


「俺は貪欲に強さを求める。クティーラ・ヨグカスタム。これから先、てめぇは俺の力の一つ。俺の力にノイズはいらねぇ。全力で、高みを目指してもらう。イヤだと言っても聞いてやらねぇ。俺を相手に『殺す』とハシャいだギルティを、これから先の努力で償え」


 踏み込み足に力を乗せて、

 グンッと、とのびやかに、

 センは、

 クティーラの腹部に拳を叩き込む。



「がっはぁああっっ!!」



 盛大に血を吐く美少女。

 コンプラ的にだいぶ問題ありそうなシーンを横目に、

 センは、


「女を殴るのは道理に反する……なんて、ジェントルメンな宣言をかます男前キャラが、漫画の中には、たまにいるが、俺はそうじゃねぇ。俺を相手に上等こいたやつは、女だろうが、ガキだろうが、関係なく、拳でわからせる。それが俺のサイコ道だ。よろしく、どうぞ」


「ぐぅ……はっ……なに、この強さ……なんで……こんな……え? なにこれぇ……」


 センの意味不明な強さに対し、

 ただただ困惑してしまうクティーラ。


 恐怖や苦痛よりも、

 とにかく、『意味不明』の方が勝ってしまうという、

 かなり特殊な状態。


「俺が積み重ねてきた地獄は、お前のポテンシャルを超えている。それだけの話だよ」


 丁寧に煽っていくセン。


 クティーラは、いったん、『沸き上がる意味不明』を横に置いて、

 真正面から膨れ上がった怒りをあらわにし、


「神に選ばれたこのあたしが! ポテンシャルで、下等生物に劣るぅ?! ふざけるのもぉおお! たいがいにしろぉおおお!」


 叫びながら加速するクティーラ。

 魔力が限界を超えて充満し、

 オーラがキレッキレになる。


 そんなクティーラの激昂ぶりを目の当たりにして、

 センは、


「ちょっと煽っただけで、ずいぶんとハジけたな。沸点ひくすぎだろ」


 軽く呆れつつも、

 加速していくクティーラを、

 お上手にいなしていく。


 クティーラがどれだけの攻撃を繰り出しても、

 センの前では柳に風。


 ゆったりと構えたセンは、

 クティーラの猛烈な攻撃を、

 ヒョイヒョイという擬音が聞こえてきそうなレベルでいなしていく。


「あたしのぉおお! 攻撃をぉおおお! 弄ぶなぁああああああ!!」



 バキバキに血走った目で、

 クティーラはセンを睨みつけ、


「あああああああああああっっ!」


 すべてのオーラと魔力を、

 丹田の一点に集中させる。


 クティーラの全てが、グググググっと膨れ上がっていく。

 限界を超えて、もっと先へ、もっと先へと、

 自身の魂魄を、これでもか、これでもか、

 と、ガムシャラに押し上げていく。



「クティーラはぁあ! クティーラなんだぞぉおおお! 絶対にバカにするなぁああああ! 敬えぇえええええ! ひれ伏せぇええええ! 恐怖しろぉおおおおおおおおお!」



 だいぶ、イタいことを叫ぶクティーラ。


 センは、しんどそうな顔で、


(尊敬されないからキレるって……なかなかのダサさだな……『こんなヤツを手持ちに加えて大丈夫だろうか』とちょっと心配になってくるレベルだ……まあ、今は手ゴマが足りていないから、手持ちにせざるをえないんだけど……)


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