27話 テンプレヤンキース。


 27話 テンプレヤンキース。


 ――前回の『1001周目』で、

 センは、正式に『人類の王』となった。


 責任感の強いセンは、その職務を全うしようと全力でもがき続けた。

 その結果、センは、全人類に対して強い『愛着』を持つようになった。



(今回のループでも……俺は、こいつらを守ってやることはできない……こいつらは、間違いなく、一週間後に死ぬ……)



 そう思うと、体の奥が軋んだ。

 痛みを感じる。

 やわなハートが悲鳴を上げている。


(俺はいつ勝てる……この地獄を処理できるようになるまで……あと、どれだけ、自分をイジめればいい……)


 街を行き交う人々を見ていると、

 クトゥルフ・オメガバスティオンへの闘志が沸き上がってくる。

 しかし、活力だけが、いくら、みなぎっていたとしても、

 実際に勝てるかどうかは、全く別の話。


 心は折れていない。

 ループするときに言った通り、

 センエースは、まだ頑張れる。


 ――だけれど、これからも、まだまだ、全人類の死を目の当たりにしないといけないという事実を前にして、身がすくんでいるのもまた事実。


(俺の人生、本当に、難易度がエグすぎる……)


 とほうもなく深いタメ息をついて天を仰ぐセン。

 全力で頭を空っぽにして、心の中だけでも自由になるように努めていると、

 そこで、


 ドンッ、


 と、軽く、誰かと肩がぶつかった。

 反射的に、


「おっと、申し訳ない」


 と、街中でボーっと突っ立っていたことを謝罪すると、

 ぶつかった相手は、


「痛ぇ、いてててて」


 などと、わざとらしく、ぶつかった左肩を右手で抑えて、痛みを訴えてくる。

 それを見た、『彼』のツレ数人が、センを囲い、


「おいおい、これは酷いだろ。完全に折れてんじゃねぇか」


 と、ニヤニヤしながら、センに対し、


「これ、どうするよ? え? これ、完全に事案だろ。ヤバいよ、これ」


 と、空っぽの言葉で威圧してくる。


 彼らは5人組の男女グループで、男3・女2の割合。

 高校2年~3年ぐらいの年齢で、バチバチにチャラついた容貌をしている。


 あからさまなヤンキー&ギャル感全開で、

 見た目貧弱なセンに対して、

 全力でイチャモンをつけにかかってきている。


「これは、あれだろ? 慰謝料的なあれだろ?」


 などと、センの肩を軽く押しながら、

 正式なカツアゲをかましてくる。


 そんなテンプレヤンキー1号に追従するように、

 隣にいるテンプレヤンキー2号も、

 指を三本ほど立てながら、


「3万だな。ないなら2万でもいいけど。少なくとも、諭吉数人は積んでもらわないと話にならねぇ」


 続けて、センと肩がぶつかったテンプレヤンキー3号が、


「痛ぇよぉ。諭吉の包帯で応急処置しないと治らないよぉ」


 などと、小芝居を仕掛けてくるテンプレヤンキー3号。

 その横にいるケバケバしいギャル1号が、


「きゃはは、やめなよー。その子、震えてんじゃん」


 などと、笑いつつも、かるく仲裁に入ってきた。

 どうやら、彼女は、そこそこまともな神経をもっているようで、彼らが無茶をしようとすると、それを、やんわり止める役割を担っている模様。

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