48話 枯渇。


 48話 枯渇。


「所詮は、ザコ二体の合体。永(なが)きを積んできた俺の相手にはなりえねぇ」


 驚くほど、あっさりと、カギ三つを奪取。


「……イカれるほど、もがき続けてきたが……結果は、あっけなかったな。後半の20万回ぐらいは必要なかったかもしれん……というか、なんか、後半は、もう、ハイになっていて、ほとんど覚えていない」


 『ただ苦しかった』という記憶しかない。

 『何がどう苦しかったか』を詳しく説明することは不可能。


 ――ただ、苦しかった。

 ――本当につらかった。

 しかし、センは乗り越えた。


(ニャルの提案……アレを受ける必要性は、おそらくない……俺は強くなった。普通にやって、普通に勝てるはず……)


 こころの底からそう思えるだけの器は完成した。

 だから、


「よし……じゃあ、もう、このままいくか。確か、あと、黒い石も必要だったっけ」


 そう言いながら、

 センは、屋上に向かい、黒い石を手に入れると、

 キーアイテムとなるカギ三つと黒い石を厳重に保管して、

 眠りについた。


 沸いてくるメタル系をサクっと倒し、

 それ以外の時間は、全て睡眠に費やした。

 体の芯を休息させること。

 完璧な状態で『クトゥルフ・オメガバスティオン』と対峙することだけを考える。


 ――そうしてたどり着いた最終日。


 センは、瞬間移動で、オメガタワーに向かうと、


「さぁて……気合いを入れていこうか……」


 『三つのカギと黒い石』を忘れていないかチェックしてから、

 センは、オメガタワーの最上階を目指す。


 そのまま、管理人室に突撃したのだが、


「……あれ?」


 そこには誰もいなかったし、

 特に何も起こらなかった。


 ――と、そこで、

 ヨグシャドーが、


(言い忘れていたが、修行僧スイッチを押した状態だと、フラグが死ぬから、クトゥルフ・オメガバスティオンには会えないぞ)


 などと、ナメ腐ったことを口にした。


「……もぉおお……」


 しんどそうに、声をもらしてから、

 天を仰ぎ、


「うっっざぁぁ……ここまできておいて、ハシゴを外すなよ、もう……こちとら頭の中では、『ペル○ナ5』で予告状を出した時のノリノリなテーマが流れていたんですけど」


(正規のルートで、正規のフラグを建てて、ここまでこい。それがせめてもの礼儀というやつだ)


「誰に対してのだよ……つぅか、そろそろ、お前ら、災難側が、俺に対して礼儀をしめしやがれ、クソが」


 ため息をついてから、


「その正規のルートってのは、具体的にはどういう感じ? たとえば、初日の朝に、黒木に電話をするとかは? もうアイテムいらんから、あいつも、いらねぇんだけど」


「大事なことは、幻爆の剣翼が舞うかどうか。黒木に連絡する必要はない」


「ロイウムツァグを殺して、200人首トーン、武道会優勝、オメガタワー直行でオールオッケーって感じか……」


 そう言いながら、センは、学校に帰った。

 もう、銀の鍵は探さない。


 ――実は、もうすでに、枯渇していた。

 ここ1000年ぐらい、ずっと、

 一応、探してはいたのだが、

 しかし、銀の鍵は見つからなかった。

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