2話 閃壱番の憂鬱。
閃壱番の憂鬱。
センが通っている『時空(じくう)ヶ丘(がおか)学園』は、
敷地面積がハンパじゃない、幼小中高大一貫の超々マンモス学校。
センがこの『無駄にでかいだけの高校』を選んだ理由はただ一つ。
『普通の高校』の中で『一番近い』から。
『エグい進学校』や『不良高校』や『高専』など、
『すべての高校』を含めると、
家から近いランキングは『5位』くらい。
一般高校生で、一般の大学を目指しているセンは、
普通に、家から一番近い、一番普通の高校を選んだ。
まあ、時空ヶ丘は『敷地面積がイカれているマンモス高校』なので、
完全な『普通』ではないのだが。
ちなみに、
『時空ヶ丘学園』にはもう一つ、
『普通ではない点』があって、
それは……
(小学校の時から、『時空ヶ丘には頭のおかしい金持ちが5人もいる』というウワサは聞いていたが……まさか、あそこまでイカれた連中だったとは思わなかったぜ)
登校途中、
センは、『彼女たち』のことを思い出しながら、
しんどそうにタメ息をつく。
ちなみに、『彼女たち』は、
高校入学前の段階では、
有名な『5人組』だったのだが、
現在では、一人欠けて、
『4人組』となっている。
理由は単純。
中3の時に、その中の一人が事故で亡くなったから。
どれだけ金持ちでも、死は平等に訪れる。
ただし、平等・普通なのは、
『さすがに事故れば死ぬ』という点だけで、
純粋な『人間性』に関しては、
全ての面で常軌を逸脱していると言わざるをえない。
彼女たちは、バックボーンも、容姿も、性格も、すべてがおかしい。
(親が上級国民をやっているというだけで、当人たちは、ただのガキだろうとおもっていたが……考えが甘かった)
どうせ『尾ひれのついたウワサ』だろう、
とタカをくくっていたが、
実際の彼女たちは、想像を絶するヤバさだった。
(あいつらは、完全に頭がおかしい。明らかに普通ではない。金持ちの家に生まれると、全員、ああなっちまうのかね……こわいねぇ。俺は普通の家に生まれてよかったぜ)
一般家庭に生まれたことに対し、軽く安堵しつつ、
(つぅか、なんで、あいつらは、時空ヶ丘なんかにいるんだ? ああいう、金持ちお嬢様は、文字通り、『お嬢様学校的な高校』にいくもんじゃねぇのか? 時空ヶ丘は、ただデカいだけで、それ以外の特徴は、さほどない普通の高校だぞ……まあ、卒業生の中には、有名人や著名人が妙に多いが、そんなもん、単純に、分母が多いってだけの話だろうし……)
と、そこまで考えた時点で、
センは、ハっとして、
(おっと、なんで、俺は、あいつらの事なんて考えてんだ……あいつらみたいな、『物理的な意味で住む世界が違う』と言っても過言ではない、雲の向こう側にいる連中の事なんか、考えたところで、一つも意味なんかねぇ。……夢に引っ張られすぎだぜ、クソうぜぇ……)
邪念を振り払うように、
頭を左右に振りながら、
高校へと向かうセン。
『変な夢を見た気がする』という点以外、
特に何も変化はない、
いつも通りの、平日の朝だった。
『凡人・閃壱番』の『日常』に『おかしな点』は一つもない。
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