悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

ミリオン

神A章 ゼノ・セレナーデ

1話 『究極超神センエース』だった高校生。


 ――その二神は、どちらも、最果てに届いていた。


セン「強かったよ、虚空の王よ。あんたは間違いなく、最強の神だった」

虚空「……まぶしいな、ヒーロー。貴様の命は、今、太陽よりも強く輝いている」


 「外なる神々の王」の言葉に、

 「究極超神センエース」は、おごそかに応える。


セン「俺はヒーローじゃない」


 ――それでも、叫び続けたのは、なぜだ。

 ぶっ壊れて、

 ゆがんで、

 くさって、

 

 

 それでも、なくしたくないと、心から、思えるものがあったから。


 うれしいことより、

 辛い事のほうが、多かった。


 けど、センエースは、それでも、


 ……



虚空「センエース。超えるのか。私を。この私を。虚空の王を」

セン「200億1万200年。俺はきっと、あんたを超えるために、それだけの時間を積んできた」



 ――聞こえるか。見えているか。虚空の王よ。

 ――お前の狂気にあてられて、俺の全部が、沸騰している。

 ――必死に積み重ねてきてよかった。


 ――おかげで飛べる。

 ――もっと高く。



 あまねく全ての命を背負って、

 センエースは、覚悟を謳(うた)う。



 ――ヒーロー見参――










~~~~~~~





1話 『究極超神センエース』だった高校生。




「――はっ!!」



 目が覚めた時、

 センは、ベッドの上だった。


 『ここ』は、彼――『高校一年生・閃壱番』が『生まれ育った実家』の自室。

 決して高級品ではないが、ぬくぬくと温かいベッド。

 『理不尽な絶望』と向き合う必要などない、

 親や社会によって守られた世界。


 『いつも』と何も変わらない、

 穏やかな、『平日』の朝。


 柔らかな太陽の光が、

 窓の外から降り注ぐ。

 どこまでも平和な、日本の朝。



「……はぁ……はぁ……」



 チチチっと、スズメの鳴き声が聞こえた。

 どこまでも静かで、優しい朝だった。



「……夢……」



 寝汗でベットリしている両手を見つめながら、

 ボソっとつぶやくセン。


 『えげつない闘いをしていた夢』を見ていた……

 ような気がするが、しかし、


(……どんな夢だったっけ……)


 時間が経つにつれて、

 『夢の記憶』は、どんどん薄らいでいく。

 それは、きっと、誰にでもある経験。

 むしろ『夢の記憶を、いつまでも意識上に保管し続けておく方』が難しい。


 夢の記憶を失っていくのは、人間にとって、至極当たり前の話。

 何もおかしくはない。

 『高校一年生・閃壱番』の『日常』に『おかしな点』は一つもない。


 ゆえに、二分も経った頃には、



(……なんも、思い出せねぇ……なんか……マンガみたいに闘っていたような気はする……すっげぇ、しんどかったような気がする……メチャメチャ大変で、苦しくて……けど、なんか……楽しかったような気も……しなくはない……)



 もはや、『そんな気がする』という程度にしか思い出せなくなっていた。

 詳細な記憶は完全に失った。


 だから、最後に残ったのは、


(夢か……全部……そうか……まあ、だよな……)


 そんな『何にもならない納得』だけ。



 ★



 夢から目覚めたセンは、

 起きてから数分たった今でも、

 まだ、ボンヤリと呆(ほう)けていた。


(夢の中で俺は、たぶん……変身したり、飛んだり、手からビームを出していたような……いや、してなかったかな……そんな『ドラ〇ンボール』的な感じじゃなくて、『はじ〇の一歩』みたいに、物理法則を遵守しながら殴り合っていただけだっけ? なんか、どっちもありえる気がする……んー、ダメだ……思い出せねぇ……)


 すべてが、うっすらと、ボンヤリとしている。

 ただ、今でも『変に覚えている個所』が無くはなくて、


(……なんか……クラスメイトの女子が出てきた気がするんだけど……誰だったっけ……たぶん、『あの4人の中の誰か』だと思うんだけど……)


 心の中でつぶやきつつ、

 センは、

 自分のクラスメイトの顔を思い出す。


 『彼女たちの事』は、すんなりと思い出すことができた。

 『現実のこと』なので、これも、当然の話。


 『男子高校生・閃壱番』の『日常』に『ゆがんだ点』は一つもない。


(……『茶柱(ちゃばしら)』と、変な言い合いをしたみたいな……そんな夢だったような……気がしなくもない……)


 クラスメイトの女子生徒『茶柱(ちゃばしら)罪華(つみか)』を思い出して、

 センは軽く赤面する。


(なんで、あいつの夢なんか見るのかなぁ……もしかして、俺、深層心理では、あいつのこと気になってんの? ……うわぁ、気持ち悪ぃ……)


 顔が熱くなった。

 耳まで赤くなって、身悶(みもだ)えする。


(いや、まあ、あいつは、確かに、『見てくれ』だけは『出来がいい』と思うけど……でも、あんな、性格に莫大(ばくだい)な問題を抱えているシリアルサイコのことなんて……うわぁ、きしょい、きしょい)


 『夢にクラスメイトの女子が出てきてあたふたする』

 という思春期特有の恥ずかしさに興じるセン。


 その光景は、普通に気色悪いものの、

 しかし、特に『不可思議』と呼べるほどの異常ではなく、

 結局のところは、極めて平常な男子高校生の日常に過ぎない。


「……朝から、しんどっ……」


 ため息をつきながら、

 センは、ようやく、ベッドから降りる。


 『いつも』のように、

 顔を洗い、

 歯を磨き、

 メシを食って、

 学校にいく準備をして、

 家を出る。


 何も変わらない、『いつも』の風景。



 『一般人・閃壱番』の『日常』に『おかしな点』は一つもない。


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