7話 本物のマシンガン。

 7話 本物のマシンガン。


 頑なに否定を続けるセン。


 そんなセンの横に立つ蓮手が、

 ニっと笑いながら、


「こいつの名前、壱番と書いて、エースって読むんですよ。どうです? なかなかのキラキラ具合でしょう? 殴っていいですよ」


「よくねぇよ。なんで、キラキラネームだと殴ってよくなるんだ。俺の人生、ナイトメアすぎだろ。お前の右手よりも全然ダークネスだよ」


 と、冷静な対処をかましてから、

 センは、冷めた顔で、テロリストに視線を向けて、


「ルビに関する文句は親に言ってくださいね。俺が自分でつけた名前じゃないんで」


 と、どうでもいい前を置いてから、


「で? なんか用ですか?」


「あ、えっと……紅院家から君に手紙を預かっている。この場で読むように伝えてくれと言われているから、すぐに読んでもらいたい」


 そう言いながら、封筒を渡してくるテロリスト。


「手紙ねぇ……」


 そうつぶやきながら、

 センは、封筒を開いて、中を確認する。


 その間、

 蓮手は、テロリストに、


「……そのマシンガン、ものスゴい精巧ですねぇ。見た目の重厚感がエグい……まさか、本物すか?」


「もちろん、本物だ」


 そう言いながら、テロリストは、

 地面に銃口を向けて、引き金を引いた。


 パパパッ、

 という、なんとも間抜けな渇いた音が響いて、

 BB弾が、数発はねた。


 メインスプリングの反発が弱く、

 威力はゴミみたいなものだった。


「ほら、本物だろう?」


 などと言いながら、BB弾を回収してポケットにしまうテロリスト。


「間違いなく本物ですね。――ちなみに、これってどこで売っているんですか? こんな出来がいい本物は初めて見た」


「これは、紅院家から借りているだけだよ。おそらく特注の非売品じゃないかな」


 などと、蓮手たちが何の生産性もない会話している間、

 センは、手紙を読み込んでいた。


 その手紙に書かれていた内容は以下の通り。


 『今回、時空ヶ丘学園に忍び込んだテロリストの数は総勢200名。彼らの装備品は大半がモデルガンだが、数名、本物の銃を所持している。制限時間内にテロリストを殲滅できなければ、なんの罪もない時空ヶ丘学園の生徒が最大で10名死ぬ。これは脅しでもハッタリでもない。君が行動を起こさなければ、30分後、最初の犠牲者が出る。もう一度言う。これは脅しではない』


(……おいおい……)


 渋い顔で、手紙を何回か読み直すセン。


 非常に簡潔な内容なので、

 意味を理解するのは難しくなかった。


 センは、蓮手と話しているテロリストのモデルガンを横目に、


(……恐ろしく精巧な造り……見た目じゃモデルガンか本物かの見分けはつかねぇ。もちろん、ゴリゴリのミリオタなら、遠目にも判別できるんだろうが……俺にその手の教養は備わってねぇ。『本物のマシンガンを持っているやつだけ選別して倒す』というプランは不可。200人、全員を始末する必要がある)


 センの『サブカル系知識』は、そこそこ広いが、だいたい浅い。

 ゆえに、ガスガンの『真贋(しんがん)』を見極めることは不可能。


(……『見ただけでは判別不可能な特注品のモデルガンを配っている』という事実がある以上、この手紙の信憑性は非常に高い……もちろん、ただのハッタリである可能性も十分にあるが……)

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