26話 スーパーセンエースを待ちながら。
26話 スーパーセンエースを待ちながら。
「良い拳だ、パチモン。お前の閃拳は、質が高い。深い積み重ねを感じる」
「スーパーセンエース、お前の閃拳はアレだ。何がどうとは言えないが、ちょっとダメだな。ま、なにがどうとは言えないが」
「褒めてやったんだから、褒めて返すのが日本人としての礼儀じゃね?」
「礼儀よりも感情を優先させるのが俺の流儀なんでね」
「節子、それ流儀ちゃう。ただの輩(やから)ムーブや」
数分なのか、数時間なのか、あるいは数日か。
把握できないほどの時間が流れて揺れて。
(同じ出力だからわかる。スーパーセンエース……こいつは強い)
センは理解する。
相手の強さ。
同じ出力で相対しているからこそわかる、
『レベル』の違い以上に感じる命の遠さ。
「スーパーセンエース、お前は、俺よりも強い。これは絶対に間違いのない事実。それは認める」
だからこそ、
「感謝する。俺よりも強いお前に。おかげで、今日、俺は、一歩、先に進める。お前は最高に優秀な経験値だ」
センはスーパーセンエースの強さに没頭する。
深く、深く、対話に集中する。
他の全てを頭の中から排除して、
『スーパーセンエースの強さ』に『意識の全て』を傾ける。
「うらやましいね。発展途上は美しい。俺は、なかなか前に進めない。ある程度のところまで進んでしまうと、『次に進むために必要な経験値』は膨大になる。けれど、『イカれた量の経験値』を稼ぐ手段はそんなにない」
研ぎ澄まされた時間の中で、
二人は、多くの言葉をかわした。
特に意味のない会話と、
何気に『意味ありげ』だけれど意味が分からない会話を、
基本的には交互に、
時には片方だけぶっ続けで。
――そんな濃密な時間の中で、
センは、だんだんと、スーパーセンエースを理解していく。
スーパーセンエースは、間違いなく、
己と『非常に似た性質の武』を持つ修羅。
けれど、
(……ズレる……呼吸が合っていない……)
呼吸を乱されているのではない。
互いが合わせようとしているのに、
どうしても、半テンポずれる。
だから、
(……これは……違う……こいつは、強い。間違いなく強い。けれど、こいつは……)
気付いた。
おそろしく些細な違い。
センでなければ見逃しちゃうレベルの機微。
「スーパーセンエース」
闘いの中で、センは、
スーパーセンエースに、
「お前はスーパーセンエースじゃない」
そう声をかけた。
「へぇ。そうなのか? じゃあ、俺はなんだ? ウルトラセンエースか?」
などというスーパーセンエースの軽口をシカトして、
センは続ける。
「お前は、きっと、スーパーセンエースに、かなり、うまく似せてあるんだろう。けれど、スーパーセンエースとは違う。俺は、本物のスーパーセンエースを知らないが……これだけは分かる。お前はスーパーセンエースじゃない」
「……今度は、スーパーセンエースって言いたいだけのアレではなさそうだな」
湿度の高い笑みを浮かべて、
スーパーセンエースは、
センの目を、ジっとみつめ、
「……スーパーセンエースなんて、存在しない……」
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