110話 500。


 110話 500。


「お前ら、マジで、『ループ開始から200年経ちましたよ』っていうお知らせしただけ?」


(そうだが?)


「そうだが、じゃねぇよ。二度と、朝っぱらから、無意味なことで、やかましく騒ぐんじゃねぇぞ、クソ鬱陶しい」


(無意味なことではないさ。とても重要なことだ。破格の歴史的快挙が積み重なり、すべての願いを形にして、そうやってたどり着いたのが今なんだ)


「うっせぇ、ぼけ。フワフワした最終回みたいなこと言いやがって」


(ちなみに、めでたいのは今回だけだから。別に、200年経過するたびに拍手するわけじゃねぇから。200年後に、また拍手してもらえるなどと思うなよ)


「人の話聞いていねぇのか? 二度と、人の頭の中で勝手に拍手するんじゃねぇ、と怒られたばっかりだろうが、ぼけが。つぅか、あと200年も、こんなことやったら、マジで頭バグるわい!」






 ★






 ――本来であれば、

 この段階で、センのタイムリープは終わりを迎えるはずだった。


 センに許されたタイムリミットは200年だった。

 しかし、マザコン熾天使たちが、

 決死の努力を積み重ねた結果、

 センの地獄は、無期限延長されることになった。


 ――ゆえに、


「え、ちょっと待って……あれ? なんか、強くない?」


 ひたすらに繰り返して、合計200年も鍛錬を続けたセンは、

 『そろそろ行けるな』と判断して、

 ロイガー・オメガバスティオンに挑戦したのだが、


「待て待て、お前、なんか、強くなっているぞ! ふざけんな! なんでだ?!」


「200年を超えたからな。当然、壁は高くなるさ」


「なにを言ってんの、お前?! え、もしかして、200年以内にクリアできなかったら、難易度が上がる仕様だったの?! そういうことは、最初に言ってくれぇええ!」


「そういうわけでもないんだが……まあ、貴様の視点で言えば同じことか」


 そうつぶやきながら、

 ロイガー・オメガバスティオンは、センとの距離をつめて、

 腹部に、豪快なフックをぶちこんでいく。


「ぶへぁああぁあああぉおおおおおっっ!!」


 噴水の吐血。

 目の前がチカチカして、頭が、一瞬、真っ白になった。



「ぶ……ぉえ……」



 ギリギリのところで意識を保ったセンは、

 懐にしまっていた『真・難易度爆上げスイッチ』をオフにして、

 ロイガー・オメガバスティオンを消し去る。


「……マジかよ……難易度あがるのかよ……うそだろ……もぉお……」


 普通に泣いた。

 しんどくて、しんどくて、たまらなくなって、

 普通に、ワンワンと泣いた。


 けど、泣こうが喚こうが、

 センの地獄は終わらない。

 というか、実際のところ、

 ここはまだ、地獄の序章にすぎない、

 ということを、センは、ここから、思い知ることになる。



 ★



 あれから、また月日が流れた。


 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、

 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、

 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、

 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、

 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、

 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、


 ――何度も繰り返して、センは、強くなった。

 強くなったのだが……



「……おい、マジか……もう、500年も、積み重ねてきたんだぞ……なのに……まだ、こんなに差があるのかよ……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る