17話 上の連中。

 17話 上の連中。


「ギャグで言っているわけじゃない。遊びじゃないんだ。覚悟が違うんだよ」


 佐田倉は、まっすぐな顔と態度で、


「佐田倉家は、紅院家に忠誠を誓っている。親戚の中には、紅院家に嫁いだ者もいる。裏の繋がりになるが、茶柱家ともズブズブだ。医療方面では薬宮家や黒木家とも懇意にさせてもらっているし、法曹界と警察関係の両方に通じている久剣家ともガッツリとしたつながりがある。経済、政治、医療、司法……ひいては軍事。すべての道と繋がりを持って初めて『華族』たりうる。そういうものだ、本物の金持ちというものは。……『古くから存在する本物の金持ち』の中で『日の本の中枢たる彼女たちの家』と繋がりを持たない家など存在しない」


「……」


「ハッキリ言おうか? 俺には、正式な命令が下っている。小学生の時からずっと。『同じ目線』で『彼女たちを守れ』と命じられている。そのために武道を学んだ。そのために体を鍛えた。そういう連中は、実のところ、俺以外にも、何人かいる。もちろん『実質的な警護』は、『特殊部隊出身のエリート』連中が、しっかりと担っている。俺たちガキの仕事は、そういう連中の精神的死角をカバーすること。もっと踏み込んだことを言おうか。彼女たちの両親は、彼女たちが『普通に学校生活を送ること』を望んでいる。だからこそ、俺達みたいなのも必要なんだ。朝から晩まで四方八方『戦場帰り丸出しのグラサンスーツSP』に囲まれた生活は、『普通』じゃねぇだろ?」


「……」


「この学校が、過剰なほど、『伝統』を遵守するという事は理解している。そして、そんな『学校側の意思』を、なぜか、『上の連中』がやたらと『黙認している』という点も理解できている」


(上の連中……紅院の親とかか?)


「だから、『その部分』に関して、いまさら文句を言う気はない。正直、警護の観点で言えば『非常に厄介だ』とは思っているが、『どうあがいても変えられない理不尽』よりも、『努力で変えられる未来』を、俺は常に望みたい」


「……その意見には、大いに同意させてもらいますよ、先輩」


 センは、先ほどよりも、少しだけ、態度を柔らかくして、


「しかし、さすがにやりすぎだと思う。朝の話し合いの末、結果的に、俺たちが遠足にいくことになったのは『オメガタワー』だ。オメガタワーだぞ」


 大事なことなので、2回言ったセン。

 続けて、まくしたてるように、


「ラブコメ系のアニメやラノベみたいに、『ちょっとはしゃいで、今回は温泉にいっちゃいまーす。何かのミスで、混浴しちゃうかもー』とか『金持ちパワーをフル稼働して海外の遊園地に行ってきまーす。多分、一泊でーす。ホテルのミスで、同じ部屋になっちゃうかもー』、とか、そういうラッキースケベ要素がアリアリなパリピセレクションだったら、さすがに、『おいおいおい』ってなるのも、まだわからなくもないんだが……オメガタワーだぞ?」

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