18話 とにかく不愉快だから。


 18話 とにかく不愉快だから。


「ラッキースケベ要素がアリアリなパリピセレクションだったら、さすがに、『おいおいおい』ってなるのも、まだわからなくもないんだが……オメガタワーだぞ?」


 まわりを見渡して、少し離れた場所に見えるタワーを指さし、


「もう、ここからも見えてるよ。あそこだよ、あそこ。バスで1時間かからねぇ距離だ。間違いなく日帰りだ。朝、あそこにいって、スタッフに挨拶して、偉いさんの話をちょっと聞いて、1~2時間、展示物やら何やらを見学して、昼に、サっとメシ食って、また、1~2時間、タワー内を軽くまわって、夕方までに帰ってくるだけ……たったそれだけのしょっぱい遠足を、全力で止める理由が俺には、サッパリ理解が出来――」


「オメガタワーには、ボーリング場があるだろう」


「え? あ、ああ。そうだな。ちょっと古めかしい感じのが――」


「カラオケもあるな。シャレた劇場もある。景色のいいレストランも、悪くない雰囲気のカフェも」


「そうだねぇ……まあ、オメガタワーの下の階層は、軽いラウンド〇ン的なポジションだからな。上層には、一応、古書とか掛け軸とか、ワケの分からん歴史的展示物みたいなのもあるけど、現状だと、『軽く遊びに行く場所』って認識されている感じだ」


 一大アミューズメントパークと呼べるほど大層なものではないが、

 めちゃくちゃ退屈な場所、というわけでもない。

 オメガタワーには、それなりの施設が整っている。


「けど、デートに行く場所って感じじゃないだろ? そりゃ、あそこにデートにいくカップルも、中にはいるだろうけど、どっちかって言ったら、オメガタワーは、小さなお子さんがいるファミリー向けというか、あるいは、爺さん婆さんの憩いの場っていうか……」


 将棋や囲碁やマージャンが出来るフロアもあり、

 ポップな公民館的なポジションとしても認知されている。


「なんにせよ、デート感的なのは薄いだろ? いや、センパイ……あのね、あんたの言いたいことも分かるんだよ」


 センはバカじゃない。

 だから、佐田倉の言いたいことが、

 ちゃんと理解できている。


「幼少期からお姫様たちを守り続けてきた騎士(ナイト)としては、俺みたいなしょうもない男と、学校公認を言い訳に、ハーレムデートみたいなマネをさせるのは、許しがたく候(そうろう)……その気持ち、なんとなく分かるんだが、けど、何度も言うように、今回の件は、そこまで大した話じゃ――」


「お前がどう思うかはどうだっていい。とにかく不愉快だから、行くなと言っている」


「……」




「ハッキリ言おう。俺は、紅院美麗が好きだ」




「ぉ、おお……」


 唐突な告白に対し、

 ここまでで、一番の大きな動揺を見せるセン。


 だが、そんな空気をシカトして、

 佐田倉は、過剰なほどたんたんと、


「別に、この恋が叶うなどとは思っていない。そこまで俺はバカじゃない。お嬢は……紅院美麗は、お世辞じゃなく、世界一綺麗な美少女だ。そんな彼女を、ガキのころからずっと見守ってきた。好きになるさ。当たり前の話だ」

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