25話 クソめんどくせぇ男
25話 クソめんどくせぇ男
「無様な恥を積み重ねて、俺は今日にたどり着いた。だから、本当ならつぶれてしまうほどの恥をかいても、俺は明日を求めて歩き出すことができる」
文言だけで見れば、それなりに、
カッコいいと思えるような言葉ではあったが、
しかし、全体を理解した上で聞くと、
とんでもないヘタレの悲鳴にしか聞こえない。
――ただ、どれだけヘタレたセリフであっても、
ひたむきに投げつけられると、なかなか無碍にはできないもの。
「……なぜ、わたくしではダメなのでしょう?」
女としてのプライドをズタズタにされたアルキは、
こころの痛みを訴えるように、そうつぶやく。
センは、より誠意のある態度で、
「ダメじゃねぇよ。俺は、ちゃんと、あんたにも惹かれている。俺という男は、童貞力がハンパじゃねぇから、女を見る目が厳しくなっている。そんな俺の厳しい目を惹いているあんたは、間違いなくすげぇんだ」
アルキを傷つけることが目的ではないので、
センは、まるで、地雷原でも歩いているかのように、
徹底して慎重に言葉を選んで整えていく。
「……では、なぜ……」
彼女の疑問に対し、
センは、
「……」
一瞬だけ歯噛みした。
あまりにも無様な話になるから、出来れば言いたくはない。
だが、相手の本気に対し、本気をぶつけるしかない今、
センは、顔を真っ赤にして、恥の重ね掛けをしていく。
「ちゃんと……恋愛がしたいんだ……鬱陶しい厄介ごとを、全部、ぶっとばして、世界を救い切ったあとで……『決戦兵器として必要だからお情けで』という理由ではなく『一人の男として魅力があるから』という理由で、歪みのない、まっすぐな好意を持ってもらって、その上で、お互いを理解して、そうやって、ちゃんと関係を結びたい……だから、今みたいな状況は、嫌なんだ……」
「私をバカにしないでください。お情けや打算で純潔をささげるほど安い女ではないつもりです」
「あんたがどう思うかはどうだっていいよ。これは、一から十まで俺の問題。俺のクソみたいなロマンティックが止まらないだけ。俺はセックスがしたいんじゃない。恋がしたいんだ。その延長線上で、童貞を捨てたいんだ。性欲を解消するだけなら風俗にいけばいい。童貞を捨てるだけなら数万稼げばことたりる。けど、そうじゃねぇ。そうじゃねぇんだ」
「まるで、乙女のようなことをいうのですね」
「否定はしない。だが、想いは変えない。それに、何をどう言い繕おうと、あんたはけっきょく、俺に同情しているだけ。可愛そうな俺を憐れんでいるだけ……違う、そうじゃねぇ……俺が必死に積んできた覚悟は、そんなに安くねぇ。傷を舐められたくて、頑張ってきたわけじゃねぇ」
「わたくしの、この胸の高鳴りを、同情などという言葉でくくられるのは心外です。この世で最も気高い男に一目ぼれした。そんな、わたくしの純情をバカにしないでいただきたい」
「一目ぼれか……嬉しいよ。本気で、俺を好きになってくれたというのなら、それは、とても喜ばしいことだ。けど、きっと、その感情を向ける相手は、俺じゃなくてもよかったはずだ。仮に、俺と同じことをやってきたイケメンがいたら、あんたは、そっちを選ぶはずだ」
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