63話 狂気の頑固さ。
63話 狂気の頑固さ。
「あたし、ここぞという場面で『きあいだま』をつかって、当たったためしがないねん」
「……」
「というわけで、あとのことはよろしく」
そう言い切ったトコに対し、
センは、一度、息を呑んでから、
「ば……バカか、お前。俺は、携帯ドラゴンの適正がないんだろ? 適正なしの100%よりも、適正ありの70%の方を選ぶべきだろ」
そう言いながら、
センは、紅院の方に視線を向けて、
「紅院、お前からも、ガツンと言ってやって……って、どうした? なんで、頭を抱えている?」
「無駄。その顔をしている時のトコは、誰が何を言っても、絶対に意見を変えない……」
「……」
「その子の頑固さは異常なの。平常時は『たいていの状況』に対して、そこそこ器用かつ柔軟に対応できるけど……『腹をくくってしまった時』は、誰が何を言おうと、絶対に意見を変えない。トコが、運命の選択肢を握った時点で、色々と終了なのよ……だから、トコにだけは、選択肢を与えちゃいけないのに……ほんとうに、もう……」
「……なんだかよくわからんが、そう簡単にあきらめるなよ。とりあえず、まずは、いったん、普通に説得してみようぜ」
「もちろん、私だって、トコが生き残ったほうがいいと思う。けど、こういう時の、その子は……本当に、エゲつないほど頑固でバカなの……だから、むり。世界はもう終わり」
「……いや、だから、あきらめるのが早ぇって……世界がかかってんだから、もうちょっと粘ろうぜ」
そう言いながら、
センは、視線をトコに戻し、
「別に自殺願望があるワケじゃないんだが……どう考えても、ここは、お前が生き残るべきだろ。ここで俺がお前を説得するってのは、実際のところ、だいぶおかしな話だが……しかし、この状況は、どう考えても、俺ではなく、お前を残すべき。というか、なんで、俺を選択するんだ? 意味がわからんのだが?」
「70%は信用できないから。以上。単純な話や」
ガンとして、意見を変えないトコに、
ロイガーが、
「では、100%にしよう。貴様が、そのカスを、凄惨に殺せば、貴様は助かる。これで、どうだ?」
「なんで、そんな、コロコロ、条件が変わるん?」
「私の勝手だ。私のワガママに付き合わなければいけない自分の弱さを恨め」
「……ウザいなぁ」
そうつぶやくトコに、
センが、
「ふふん。これは、もう、俺を殺すしかないだろ」
と、なぜか、得意気にそう言うと、
トコは、
「んー」
「なにを悩んでんだよ。悩む理由がどこにある?」
「あんた、グールを倒したっていうたな」
「あん? ああ、それが?」
「生身でグールを倒せるヤツは、ただものやない。もし、あんたが携帯ドラゴンを手に入れたら、あたしよりも確実に強い。というわけで、あんたが生き残る方が、世界のためにもなる。以上」
「……いや、だから、俺には適性がないんだろ?」
「適性がなくても、召喚できる方法が、探せばあるかもしれん。後衛デバフ担当のあたしだけ生きのこったって、先はしれとる。というわけで、あんたが生き残れ」
徹底して、ガンとして、
意見を変えないトコ。
彼女の、狂気的な目を見て、
センは、ようやく気付く。
「……は、発狂してやがる……この女……」
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