61話 これだから童貞はダメなんだ。
61話 これだから童貞はダメなんだ。
「それでもいい……全部受け入れる……どんなに苦しくてもいい。……それでもいいから……」
センは、
涙を流しながら、
「……生きていてほしい。……失いたくない。……幸せになってほしい。……それだけ」
嗚咽しながら、
それでも、なくさなかった言葉を吐き捨てる。
感情が暴走する。
頭がどんどんおかしくなる。
ニャルの『具体的な言葉』のせいで、
脳がかき乱される。
心底惚れた相手から完全に忘れられる。
その痛みを想像して頭が吹っ飛びそうになる。
『自分ではない誰か』に愛をささやく彼女たちを想像して普通に死にたくなる。
これまで、散々、苦しんで、苦しんで、苦しんで、
だから『地獄に対する耐性』は、それなりに高くなっているのだが、
しかし、これまでに感じてきた全ての痛みを、
余裕のトリプルスコア以上で超えてきた。
「女って『ダメ男』が大好きという変な生き物だからねぇ。どうしようもないクズ男に引っかかって、風俗に落とされて、クズ男のパチンコ代を稼がされる可能性もあるよ? それでも、生きていてほしい?」
「あいつらはそこまでバカじゃないだろ。つぅか、ダメ男に引っかかるかどうかはともかく、あれだけ金持ちなのに、なんで、風俗で働くはめになるんだ」
「金持ちとはいっても、所詮は親の金。勘当されたら無一文さ。そして、金持ちの家系ほど、世間体を重視する。もし、彼女たちが、看過できない罪を犯した場合、家から追放されるということは普通にありえる。たとえば、男に騙されて、オレオレ詐欺を手伝ってしまうとかね。そういうブザマを晒した時、彼女たちはバックボーンを失う――佐田倉もそう言っていただろう? 可能性だけで言えば、決してありえないとはいえない」
「……あいつらはそこまでバカじゃねぇよ」
あえて、もう一度断言したセンに、
ニャルは、これみよがしに、首を横に振って、
「やれやれ、これだから童貞はダメなんだよ。いいかい、女というのは、『この人は私がいないと生きていけない』と思い込んで『暴走して尽くしてボロボロになることに快感を覚えることができる』という特殊な生き物なんだ。彼女たちは、優れたバックボーンを持つ才女だが、しかし、女であることに変わりはない。キッカケさえあれば、いつでも堕ちるさ。人間の女とはそういうものだ」
「女に何か怨みでもあるのか?」
「女に夢を見ている君に、事実を語っているだけさ。君ほどのヒーローが、過剰な献身をささげるだけの価値などない」
「価値があるかどうかなんか知るか。俺は、あいつらのことを、そこまでバカじゃないと思っているが、想定以上にバカだったとしても、そんなことは、今の俺にとってどうでもいいこと」
センは、まっすぐに、ニャルの目を見て、
「得したくて決断したわけじゃねぇ。つぅか、損得を言い出したら、誰かに感情を向けるということが、そもそも、とんでもなく損な行為だと、俺は思っている」
自分の事だけ考えていれば、基本的には得ができる。
他人のことは利用して、だまして、うまく転がして、
そうやって生きていけば多くの利益を得る事が可能。
――けど、その生き方だと胸を張れねぇ。
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