44話 警告。

 44話 警告。


「俺は、絶対に、ノゾキなんかしない」


 そんなセンの訴えを聞いて、

 トコは、数秒悩んでから、


「……一つだけ聞いてええか?」


「お好きにどうぞ」


「どうやってグールを殺したん?」


 その質問に対し、


「うっ」


 と、センは、言葉を詰まらせる。


 数秒の間をおいてから、


「えっと、それは、だな……つまり、その……こう……」


 真摯に、言葉を探した結果、


「クルンと半回転で投げ飛ばした……みたいな……感じの……」


 聞くに堪えない結果になる。

 トコに対して徹底して真摯であろうとした結果、

 全力でカラ回ってしまうというお粗末な体たらく!


「……は? 投げ飛ばす? なに、ジブン、武道の達人かなんかなん?」


「いや、違うんだが……なんか、変に、柔道が出来るというか……柔道っていうか、合気道? それも、また、ちょっと違う気もする……太極拳? いや、それも、違うような……」


「……なんか、ものごっつ、ウソくさいんやけど」


「いや、ここに関しては、正直、俺もそう思う。なんで、俺がグールを殺せたのか、その点に関しては、正直、俺もワケがわからん。しかし、グールを殺した結果、転移のワナが発動して、ここにいる……というのは、ただの事実だ。ここに関しては、堂々と言える。自白剤を打ってくれてもかまわない」


「んー……なんやろな……ウソを言ってない気もせんではないんやけど……発言が、もろもろ、フワフワしすぎてんねんなぁ……」


 両者の間で、妙な時間が流れた。

 と、その時、



「「「きゅぅううい! きゅぅうい!! きゅぅううい!!!」」」



 トコとツミカとマナミの携帯ドラゴンが、

 そろって、一斉に、大声で鳴き始めた。


「ぁ?! 『GOO出現』の警戒音やと?! はぁ?! なんでや? ツミカ、召喚の儀式をしとった奉仕種族は殲滅したんやろ?」


「間違いなく皆殺しにしたにゃぁ。そのうち一体は、それはもう残虐に殺してやったにゃぁ。腹からホルモンを引きずり出して、二重跳びの世界記録に挑戦してやったにゃぁ」


「そんなん聞いてへん、ってか、おどれ、何をやってんねん!」


 そこで、トコは、

 センに視線を向けて、


「あんたが殺したっていうグール、他に仲間がおるとか言うとったか?」


「……いや、そんな話は聞いていない。だが、もしかしたら、俺が殺したヤツに仲間がいて、そいつらが、召喚した……という可能性はあるだろうな。つぅか、お前ら、居場所のサーチとか出来ねぇの?」


「……できんことはないんやけど、良質なフェイクオーラを使われたら厳しい……」


 と、そこで、

 着替えを済ませた紅院も、シャワールームに飛び込んできて、


「トコ! 罪華! マナミ! 戦闘準備! この警告音のボリューム……おそらく、上位のGOO! 本気で行く必要があるわ! 全員、覚悟を決めて!」


 真剣な目で、

 そう叫ぶ紅院。


 もはや、頭の中に、センのことなどみじんもない。

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