17話 この上なく尊き命の王センエースが築いた世界。


 17話 この上なく尊き命の王センエースが築いた世界。



 『人類全滅からのリセット』を、

 『救い』のようにとらえていたセン。


 ――しかし、

 時がたち、

 『運命の日』が訪れても、

 剣翼が舞うことはなかった。



「はぁ? え? どういうこと?」



 センは、ヨグシャドーに詰め寄った。

 どういうことかの説明を求めた。


 すると、ヨグシャドーは、シレっと、


「一体いつから、これまでのループと同じ日に剣翼が舞うと錯覚していた?」


「……いや、だって……銀の鍵には、魔力的なリミットがあって……」


「そんなものは、私がいれば、どうとでもなる」


「……」


「無論、融通をきかせるのは今回だけだがな。今回の1001回目のループは、それだけ特別だということを心にきざめ。この上なく尊き偉大なる人類の王センエースよ」


「……」






 ★






 ――それから、結局、20年ぐらい、センは、彼女たちと時間を共にすごした。

 その間に、センは『人類の救世主』として、完璧に認知されていた。


 300人委員会は、センの意志を尊重する。

 センがノーと言えば絶対にノーの世界が誕生する(センエースの社会評価がマイナスにならない範囲のみの話)。


 ちょっとした反発もたくさんあったが、しかし、

 絶対的な力を持つセンが、

 『絶対にゆるぎない信念』をもって、

 世界の舵を切り続けた結果、

 世界は少しずつ、しかし、確実に、

 『センが望む世界』へと変わっていった。


(今回のルートで孤高は望めない。それはもう十分に分かった。こうなったら俺も意地だ。とことんやってやる。ただし、俺の理想をナメるなよ。俺が徹底的にやると決めた時の、他者に強いるブラックっぷりは常軌を逸しているぞ)


 センは、全速前進の構えで、世界を、自分にとっての理想の状態に盛って行こうと奮迅した。


 誰も逆らえない王が猪突猛進の構えを見せてしまえば、

 もはや、立ち止まることなど出来やしない。


 普通なら、無茶な王の暴走を前にすれば、

 『革命』を求める者たちが立ち上がり、

 政権がひっくり返る――というのが、世界の歴史的常識だが、

 しかし、そうはならなかった。

 なりえなかったと言ってもいい。


 この世界に存在する者は皆、

 『センが背負っている地獄』を知っているので、

 『センの地位を狙う者』は存在しなかったのだ。


 『ナンバーツーの座』を求めて暗躍する者は、

 300人委員会の中で、何名か見られた。

 コミュニティの中で、より高い地位を目指してしまう人間のサガ。

 だが、『その性質が飛び切り強い権力欲の塊』でも、

 『センのポジション』だけは求めなかった。


 誰も、『センエースの献身』だけはマネできない。

 地獄のカマの底で、外なる神々を相手に英雄として舞い続ける。

 そんなことは、センエースにしか出来ない。

 『神々に抗えるだけの武力があれば可能か』というと『そういう話でもない』ということは誰にだって理解できた。

 物理的にも、精神的にも、センエース以外には不可能な芸当。

 それこそが、『命の王』という無二のポジション。


 『絶対的権力者』が、『絶対にゆるぎないポジション』から、

 『絶対的な高潔さ』でもって世界を支配する。


 ――幸せなことだった。

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