11話 裏閃流奥義の連打。
11話 裏閃流奥義の連打。
逃げ場を失ったヒーローは、
全ての思考を放棄して、
無敵を誇る裏閃流秘奥義の一つ、
――『タヌキネイリ』をぶっかましていく。
その、あまりにもヘタレなザマを見て、
茶柱は、
「挑戦的じゃにゃいか」
黒く微笑むと、
「そっちがその気なら、こっちも容赦なしでいかせてもらうにゃ」
と言いながら、
『ムニャムニャ』と寝言らしき何かをつぶやいているセンに襲い掛かる。
しかし、
「あ、こら、動くにゃ!」
センは、コンボ技である『寝相が悪すぎるヒーロー』を決め込んでいく。
襲い掛かってくる茶柱の魔の手を、
センはヒラヒラと回避していく。
「あ、この男、薄目を開けているにゃ! 寝たふりするなら、徹底するべきだと、ツミカさんなんかは切に思うにゃ!」
「むにゃむにゃ……寝てるよ……寝たふりじゃないよ……zzz」
「中途半端な演技は寒いだけだにゃ! 男らしくなさすぎて幻滅にゃ!」
「zzz……幻滅は困るなぁ……むにゃむにゃ……けど、さすがに、全部を受け入れるのは、まだ、ちょっとなぁ、うん……zzz」
などとヘタれて、クソ眠たいことをぬかすセンに、
そこで、黒木が、
「さっき、トコさんも言っていましたが、ここまできたのですから、もう、覚悟を決めましょうよ」
底冷えするような声で、そう詰め寄ってきた。
それに対し、センは、
「……zzz……」
『黙り込む』という最低の『逃げ』を決めていく。
止まらない秘奥義の連打。
そのあまりにも無様な姿を目の当たりにした紅院は、
「……な、情けない……」
本当につらそうな顔をする紅院。
そんな彼女の顔を、薄目を開けて、チラっと見るセン。
(いや、うん、まあ……情けないね。言い訳の余地もない。自分でも、こんな自分はイヤなんだよ。けどねぇ……イヤなんだよねぇ……『ループしていることが確定している、この状況』で……『記憶をなくすと分かっている状況』で……『想い出とかそういうのが全部リセットされる世界』で……『そういう大事なこと』を……誰かに強制されるように、『それが必要だから』という理由で、なし崩していくのは……イヤなんだよ……)
心の中で、ぐだぐだと、謎の言い訳を繰り広げるセン。
『そういう関係に成る』ということに対する過剰なほどの神聖視。
『狂気のモンスター童貞』ぶり。
その真価をいかんなく発揮していくスタイル。
センは、盲目のロマンチストではない。
女性に幻想を抱き、性行為に対して過剰な期待をしているメルヘンバカではない。
どちらかといえば、合理を重んじるリアリスト。
しかし、だからこそ、『譲れない信念みたいな意地』も強いのである。
あやふやなロマンチストではなく、
根が太いリアリストだからこそ、
むしろ、センは、『過剰な理想』を捨てられない。
ソコを捨てると、センエースはセンエースではなくなってしまう。
センの中では、『誰にも理解できない理想の結末』というのがある。
もちろん、具体性はないのだが、
『こういう方向性でトゥルーエンドを迎えられたら素敵だろう』、
というバカ丸出しの理想を胸に抱いて生きてきた。
その理想が、センの原動力の一つであり、
絶望の中の光でもある。
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