78話 ヘブンズキャノン。
78話 ヘブンズキャノン。
「……『ヘブンズキャノン』ッッ!!」
昂った感情のままに叫ぶと、
ソンキーの背部から、ギギギっと音を立てて、
『キャノン付きのシッポ』が生えてきた。
そのシッポは、間違いなく、
ソンキー・ウルギ・アースが誇る『とっておきの切り札』なのだが……
(ちっ……『龍暗刻(りゅうあんこう)単騎(たんき)』か……っ……一番ショボいのがきやがった……)
ヘブンズキャノンには無数の形態が存在し、
それぞれ、まったくスペックが異なるのだが、
どのヘブンズキャノンが出現するかは全くランダム。
最も出現しやすいのが龍暗刻。
そのため、性能は少し低い。
基本は物理属性で、爪を飛ばし、ファン〇ル化させるスタイル。
火力が絶妙に微妙で、切り札と言い切れる代物ではなかったりする。
(……くそったれが。『舞い散る閃光の因子』を積んでいるのだから、『純正(じゅんせい)/異世界転移無法(いせかいてんいむほう)』がきてくれてもいいと思うのだがな……ちっ)
ヘブンズキャノンの中で間違いなく最強のスペックを誇るのが『純正(じゅんせい)/異世界転移無法(いせかいてんいむほう)』。
すさまじいスペックを誇るが、めったに出現しない。
手数、火力、展開力、攻撃速度、属性、全てにおいて完璧。
マイナスポイントは、『出現確率が引くほど低いこと』のみ。
(龍暗刻の火力では、ヨグの腹は喰い破れねぇ……っ)
苦虫をかみつぶしたような顔をしているソンキー。
そんな彼の顔を横目に、ヨグが、半笑いで、
「そのしょっぱいシッポが、最後の切り札か。貴様の程度が知れるな」
「……これが『最後』の切り札だったら、確かに俺はカスだな。しかし、俺の中に潜む英知は、無限の切り札を製造する永久機関。そうだろ? 田中トウシ。この程度で終わったら、俺たちは死ぬ。それが理解できないほど、お前はバカじゃないよな?」
おかわりの無茶ぶりをくらったトウシは、
(くそぼけが、わかっとるわい……っ……今も、必死に、エルメスのバージョンアップをしとるところや……ほれ、次の切り札や。トランスフォームせぇ! モード『舞い散る閃光』を追加した! これで、ヘブンズキャノンが複数出現する可能性と、『純正』が出現する可能性を底上げできる! あくまでも確率を上げるだけやけどな!)
「上出来だ。お前も、やはりイカれている」
そう言いながら、
ソンキーは、舞い散る閃光モードで、エルメスを纏う。
深淵の輝きが一層深みを増して、
闘神としてのエグみが加速する。
それは、特別な光だった。
何がどうとは言い切れない、
不定形で、流動的な、まるで月光のような淡い瞬き。
それでいて、清廉な命の慟哭を感じさせる大きな光。
ピリピリとした雷を纏っているような、力強い輝き。
「――ヘブンズキャノンッ!」
もう一本の追加反応を受けて、
ソンキーは、期待を込めたガチャを回す。
望みは『純正(じゅんせい)/異世界転移無法』の一択。
なのだけれど、
(っっ! 『神一色』だと?! ドハズレだ! どうなっている、田中トウシ!)
(せやから、確率を上げるだけやと言うたやろうが! すべては、おどれの運の問題じゃい! このクソ不運小僧が!)
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