25話 この程度の絶望でオタオタするんじゃない!


 25話 この程度の絶望でオタオタするんじゃない!


「顔だけじゃなくて、内面も面白いとか、なかなかのエンターテイナーだにゃぁ、あははははは」


「顔でオモシロを演出している気は微塵もねぇんだよ。こちとら、バリバリシリアスで、『この顔面の人生』をやらせてもらってんだ」


「傑作だにゃぁ!」


「少なくとも傑作ではねぇ」


 しんどそうなセンと、

 センを指さしながら笑う茶柱。


 続いて笑う者はいない。


 笑いごとではないのだ。

 もっというと、笑っている場合ではないのだ。


 ――紅院は、

 センのバカ発言に対し、


「……アウターゴッドって……殺せるの?」


 『本気で質問している』というワケではなく、

 『何が何だかわからないから、一応確認している』といった感じの問い。


 それに対し、

 センは、彼女に視線を向けることなく、

 もくもくとストレッチに励みながら、


「これまでの人生の中で、何度か、『アウターゴッド級』の『化け物』と殴り合ったことがある。一度も、殺せたことはないが……『当時の俺にはできなかった』というだけで、『今日の俺にも不可能』ってワケじゃない」


 そこで、黒木が、いぶかしげな顔で、


「アウターゴッドと対面して生き残れる者などいるはずがありません。ミレーさんの一撃を指一本で止めてみせたあなたは、おそらく、尋常ではない力をもっているのでしょう。けど、魔導書を読んだ情報から鑑みるに、アウターゴッドは、そういう次元ではない。どれだけ高い力をもっていようと、『人間』では、けっして抗えない存在。それがアウターゴッドです」


「お前がそう思うんならそうなんだろう。お前の中ではな」


 軽くテンプレで流すセン。

 その間も、ストレッチに余念がない。


 ひたすらに体を温める。

 『神』を相手にしても動けるように。

 心が屈してしまわぬように。


 全力で、限界まで、舞えるように。



 ――そこで、トコが、半ギレの顔で、


「……あんたが言うてること……どこまでがホンマで、どこまでがウソなん? というか、あんた、なんなん? ほんま、だれ? ていうか、わかってんの、自分がしたこと! あんたが邪魔したせいで、これから、世界、終わるんやけど! どうしてくれるん?!」


「どうもこうもねぇよ。ためしにやってみて、無理そうだったら逃げるだけさ。単純な話だ」


「アウターゴッドが召喚されたら、その時点で世界の全部が終わって、逃げるもクソもないねん!」


「お前がそう思うんなら――」


「クソみたいなテンプレネタでごまかそうとすなぁ! ジブン、ほんま、わかってんのけぇ?! これから、全員、死ぬんやどぉ! あんたのせいでぇええ!」


「たかが、『人類の全滅』くらいでオタオタするな。その程度の絶望なら、すでに1000回ぐらいは経験してきたぜ」


「小学生みたいな見栄をはっとる場合か! 世界の終わりは一回でしまいじゃ、ぼけぇえええ!」


「お前がそう思うんなら――」


「もうええねん!!」


 センのテンプレを気合いで処理するトコ。

 そんなトコに、

 センは言う。



「心配するな、薬宮」



 どうやらセンは、ストレッチを終えたらしく、

 背筋を伸ばし、まっすぐな目で、トコを見つめる。

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