24話 センエースがアップをはじめたようです。


 24話 センエースがアップをはじめたようです。


「時間を与えたら、どうなるのかにゃ? 桶屋が儲かるのかにゃ?」


 小首をかしげて質問する茶柱。

 いつもよりも、さらに、シャレっ気の強い態度。


 そんな彼女に、センは、


「……おそらく、ボケたんだろうが……絶妙に、核心をついた発言のような気もしなくはないな……バタフライエフェクト、世界線の移動……」


 などと、しんどそうな顔でつぶやいてから、


「俺に時間を与えたところで、何がどうなるとは言えない……ただ、少し教えてくれ。薬宮の呪いを解く方法は、他にないのか? 『どうにかできる手段』が、『殺害』以外に何かのこっていないか? あるなら、教えてくれ。『かなり無理そうな手段』でも何でもいい。とにかく、他に――」


 その問いに対し、

 薬宮が、


「ない。なんもなかった。ニャルラトホテプに聞いたところ、この呪いを解く方法は他に存在せんとのこと。あたしが死ぬ以外にない。というわけで、もう時間がない。あんたが、ホンマに、コンマ数秒であたしを殺せるんやったら、あんたに頼む。ミレーの手をあたしの血でよごしたくない。どうか、あたしを殺してくれ。頼む」


「……時間がきたら殺してやる。あと十秒ある。ちょっと考えてみろ。本当に何もないか? 『これなら』って方法が、ほんとうに――」


「ないて! もう、時間くる! はよ! もう! あぁああ! ミレェエエエ!!」


 『この男は使えない』と判断したトコが、

 紅院に、自身の殺害を依頼する。


 『逼迫(ひっぱく)した状況だ』と理解している紅院は、

 奥歯をかみしめて、ブレードを強く握りしめて、


 トコの首を切断しようとするが、



「――本当にないか?」



 当然のように、邪魔をするセン。

 今度は、あえて指一本で、

 紅院のブレードを止めてみせるセン。


 その様を目の当たりにしたトコは、

 ブチ切れ顔で、


「アホなんか、お前ぇええええええ! あかぁああん! タイムリミッ――」


 時間がきた。

 呪い発動のお知らせ。


 トコの胸部に、

 禍々しいジオメトリが顕現する。



「うわぁ……ああ……ぅ、嘘やろ……」



 絶望した顔になるトコ。

 震えている紅院。

 しんどそうな顔で天を仰ぐ黒木。

 じっくりと、ジオメトリを観察している茶柱。


 そんな彼女たちを横目に、

 センは、


「いちにっ、いちにっ」


 呑気にストレッチをしていた。


 その様子が目に入った茶柱は、


「なにをしているのかにゃ?」


 当たり前の質問をなげかける。

 センは、不規則に肩をまわして、鎖骨の可動域を広げながら、


「準備運動」


 簡素に答えていく。


「なんの準備をしているのかにゃ?」


「アウターゴッドを殺す準備」


 どこまでも簡素に、

 まるで、当たり前のことを口にするかのような、

 愚か極まりないセンの発言を受けて、

 茶柱は、




「ははははは!」




 と、どこか無機質な、カラっとした爆笑をはさんでから、


「みんな、見て見て、バカがいるにゃ! こんなに脳漿が炸裂したボーイはめったにいないにゃ! 珍しいから、撮っとくにゃ」


 などといいながら、携帯ドラゴンのカメラ機能を使って、

 センを撮影する茶柱。


「顔だけじゃなくて、内面も面白いとか、なかなかのエンターテイナーだにゃぁ、あははははは」



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