98話 『真の頭の良さ』を問う闘い。


 98話 『真の頭の良さ』を問う闘い。


「……あ、ちくしょう……『トウシがいじった部分』に修正パッチが当てられていやがる……クソが……できれば、経験値取得倍率はそのままにしてほしかった……まあ、いい。俺にも、トウシの器が刻まれている。同じ人間であるトウシにできたこと。頑張れば、俺にもできるさ。俺は、やればできる子だ」



 経験値倍率をどうにかしようと、

 奮闘を開始するセン。


「えっと……魂魄処理機構の深部をいじると……バグるから……まずは、表層のコードを……あ、これはダメか……こっちもダメだな……えっと……アーカイブメモリにつなげるためには……あ、まずは、こっちのズレないように計算してから……えっと……」


 最初から分かっていたことだが、

 本当に、大変な作業だった。


 おそろしく複雑なシステムを、

 バグらせずに改変させる神業。


 並大抵の技能では太刀打ちできない。


 トウシの器が刻まれているので、なんとなかなるかと思ったが、しかし、この辺のアレコレに関しては、ほとんど『ユーチューブで解説動画を一通り見流した』という程度の下地でしかないので、


「あ、まずは、仮想GISロック解除アダプタを繋いで、領域外ネットワークの外部装置を……あ、違うか。コスモゾーンの管理区域が違うんだから、まずは変数の設定から……えっと……え、これ、全部を計算する感じ? いやいや、何年かかるんだよ……いや、あの、1000年あっても出来る気しないんだが……や、やり方をかえよう……もう、でかい変更は無理だから、せめて、経験値取得倍率を二倍にするだけでも……まず、コスモゾーンのオートバグ処理に引っかからないように……GISネットワークからログアウト……え、できなくない? それしたら、どうやって……あ、そこからは、ニューラルネットワーク補助アプリなしでやっていく感じ?」


 知識はある。

 構造に対しての理解はそれなり。

 ただ、実際に問題と向き合うと、処理速度の点で、途方もない壁を感じた。


 『現状』のおおよそを理解したセンは、

 一度、


「ははっ」


 と、さわやかにニッコリと微笑んでから、




「ナメんなよ、ぼけがぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」




 スマホをベッドに向かって投げつけた。


「できるか、ぼけぇえええ! 人間の底の低さをナメんじゃねぇぞ、カスがぁあ! 俺は、高校数学の段階で躓いている一般人だぞ! そんな俺に向かって、こんなふざけた難易度の問題集をつきつけてきやがって! プランクトンに東大の赤本をつきつけるようなもんだぞ! いや、それよりひどい! むしろ、あたまが悪い! このF-クリエイション側の方が、むしろ、俺よりも頭が悪いと言えよう! まったく、話にならんよ、君ぃ! もっと、どうにかならなかったものかね! 俺という一般人にも分かりやすく説明できてこそ、真の頭の良さを有していると言えよう! その倫理的・道徳的・現実的観点からものを見るに、貴様は至極頭が悪い低能だと言わざるを得ない! わかったか?! わかったなら、深く反省して、私にも分かるように、心を入れ替えたまえ! 返事は?! へーんーじーはぁ?!」

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