48話 万策。


 48話 万策。


 いつだって、トウシの指はせわしなく躍動している。

 音声入力も併用して、携帯ドラゴンを改造していく。


「思いついた策その一、神殺しの着ぐるみ……エグゾギアッ!!」


 その威容を目の当たりにしたロイガーは、

 小バカにするように、鼻で笑ってから、


「エグゾギアか……まあ、確かに、神が使えば、神殺しの武器たりうる逸品だ。それは認めよう」


 ゆっくりと、

 トウシとの距離をつめて、


「しかし、人間が使っても無意味であるということを教えてやる。好きに舞え」


 優雅に先手を譲るロイガー。


 100%ナメられていると理解しながら、

 トウシは、


「ありがたいねぇ」


 そう言いながら、

 ブーストを噴かせて、

 全力の一撃を、ロイガーに向かって叩き込む。


 その辺のGOOなら木っ端みじんになるだろうが、


「……ほう。私にダメージをあたえたか。やるじゃないか。本当に驚いたぞ。コンマ数秒で再生してしまう程度のかすり傷だが……貴様は、私に、間違いなく傷を与えた。誇っていい」


「……策その一では、アカンかったかぁ……まあ、わかっとったから、別に落ち込むこともないけどなぁ」


 そう言いつつ、

 トウシは、次の手を打った。


 新たなシステムの導入。

 上位魂魄処理機構が躍動する。


 無駄を削ぎ落して、極限まで強化したトウシのあがき。


「オーラドール・アバターラシステム、起動」


 システムを起動させたことで、

 トウシの周囲に、トウシの分身が出現する。

 その数、8体。


「ほう……見事だ。アバターラは劣化コピーになるものだが……どれも、大きく劣っているわけではない……アリア・ギアスを組み込んだか」


「ああ。いくつかの制限を加えることで、分身のリミッターを解除させてもろた」


 そう宣言してから、

 トウシは、総攻撃をしかけた。

 数の暴力を惜しみなく。

 手数で勝負と言わんばかりに、

 とにかく、数量で押し通そうとする。


 ――けれど、もちろん、

 ロイガーには届かない、

 かすり傷の量が多少増えただけ。


「素晴らしいな。田中トウシ。貴様に、神の力があれば、私など簡単に消し飛ばせるだろう。だが、残念なことに、貴様は、しょせん、人間でしかない。その絶対的な差がある以上、貴様の武は、永遠に、私には届かない」


「はぁ……はぁ……」


 軽く息を切らしたトウシは、


「策その二も、通じまへんでした……と。まあ、これも、分かっとったけどな」


「それで? 策その三も試すか? 言っておくが、どうせ、無意味だぞ。それは、自分でもわかっているだろう?」


「……」


「というか、そもそも、本当に、策その三はあるのか?」


「ん? んー、まあ、あるっちゃある。絶死のアリア・ギアスを積んで相討ちを目指すという策」


「ははは。それは、策とは言わない。ただの無意味な神風特攻だ」


 鼻で笑ってから、


「確かに、貴様の潜在能力を考えれば、多少の抵抗はできるだろう。だが、私を殺せるほどではない。絶死で神種を解放することは出来ない。人のまま絶死を積んでも、神には届かない」


「神様って遠いなぁ……クラクラするわ」

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