54話 乱れ咲く銀の流星。


 54話 乱れ咲く銀の流星。


 本当のスペックの顕現!

 田中トウシのコアオーラに革新が起こるっ!!


 『世界』が!

 『田中トウシは、間違いなく、タナカ・イス・トウシである』と認めた!!


 だから、開く。

 冒涜のジオメトリ。


 トウシの頭上に描かれた魔方陣が、

 ざわめきながら、ゆらめいて、

 命のシルエットをうつしだす。


 ――そして、顕現。


 膨大な神気を放つ美形の闘神。


 現れた闘神に、

 トウシは問いかける。


「……あんたは、誰や?」


 その問いに、

 闘神は応える。



「俺は究極超神の序列二位。神界の深淵に巣食う宵闇。自縛を司る修羅にして、乱れ咲く銀の流星。彷徨(さまよ)う冒涜、ソンキー・ウルギ・アース」



「……その自己紹介は、ぶっちゃけ、なに言うてるか、さっぱり分からんけど、あんたが、ハンパやない力の持ち主であることは見るだけでも分かる。その膨大な力……どうか、借してくへんかな? 今、ちょっとハンパない状況で、どうしても、強い力が必要なんや」


 そんな、トウシの要請に、

 ソンキーは、


「ありえない話だ。……しかし、抗えない。どうやら、俺の進む道に、お前は絶対に不可欠の様子。けっして愉快な話ではないが、しかし、さほど不愉快でもないのはなぜだ」


 自分に質問していながら、

 しかし、答えを求めている様子でもなかった。


 ソンキーは、

 トウシに対して、右手をむけると、


「受け取れ。お前の中で見届けてやるよ。お前の先……俺たちの可能性を」


 そう言った直後、粒子状になるソンキー。

 淡い光を放つ粒子は、

 トウシの中へとそそがれる。

 ゆるやかに弾けると、

 そのまま混ざって解けていく。


 ソンキーと融合したトウシは、


「……これは、すごいな」


 とんでもない質量を自身の中に感じて、普通に感動していた。


「適合していく……完全に……完璧に……」


 自分の中で、すべてが合致していく感覚。

 その途中で、トウシが、すぅと息を吸うと、

 それだけで、吹っ飛ばされた腕が完璧に再生した。


 体の傷も完全に元通り。

 時間が経つにつれて、

 トウシを包み込むオーラと魔力が、

 どんどん充実していく。


「……これで序列二位? ほな、一位、どんなんやねん」


 その疑問符に対する返答はなかった。

 しかし、問題はない。

 どうしても知りたい答えではなかったから。


「……さて……ほな、いこか」


 自分に対して、ほんの少しだけ気合をいれると、

 両足に、ソっと力を込めた。


 無意味に暴走してしまわないように、

 細心の注意を払って、

 限界まで微調整した上で、

 トウシは、


 ――ロイガーを通り抜ける。


 一瞬の出来事だった。

 だから、ロイガーも、


「っ?」


 何が起きたのか、まったく理解できていない様子だった。


 けれど、そんな時間はすぐに終わる。

 ほんの数秒後に気づいた。


「ぇ……あ……っ」


 自分の中心が消し炭にされていること。

 何がどうなってそうなったのかは、いまだに一ミリも分かっていない。


 しかし、ロイガーは、死にゆく途中で、


「……はは……これは、酷いな……」


 それは、自身の運命に対しての文句。

 ホロホロと崩れ落ちていく。

 あれほどまで、トウシを苦しめた強敵ロイガー。

 しかし、その最後は、


 ――おそろしいほど、あっけなかった。

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