39話 限りなく終焉に近い禁忌。


 39話 限りなく終焉に近い禁忌。


「さて、そろそろ、このデモンストレーションも終わりにしようか」


 ニタニタと笑いながら、


「どうだい、センエース。少しは楽しめたかな?」


「このズタボロの姿を見ろ……わずかでも、楽しさを感じるか?」


 そんなセンの悲痛なメッセージを、


「それはそうと」


 ニャルは、軽やかに受け流して、


「闘いが始まる前に、ボクは、君に『クルルーに勝てなければ世界が終わる』と言ったな。あれは嘘だ」


「……」


「そう簡単には終わってくれないんだよ、世界も人生も」


「……みたいだな」


 ため息交じりにそう言ってから、


「よぉく分かった。俺はあがき続ける。必死になって、アイテムを探し続ける。GOOを殺し続ける。そして、いつか……てめぇらを殺す」


「それでいいんだ、センエース」


 ニコっと微笑みながらそう言うニャル。

 そこで、ニャルは、ふところから、銀の鍵を取り出して、


「ただし、それは『次のループ以降』でやってくれるかな。この世界線は、『クルルー』に『クトゥルフ・オメガバスティオンの記憶』をインストールするために、『アリア・ギアス永劫回帰の禁忌』をささげてしまったから、もう崩壊寸前なんだよね。というわけで、君には、すぐに、過去へと飛んでもらうよ」


「……言いたいことは腐るほどあるが……とりあえず、今、一個だけ聞いていいか?」


「手短にね」


「……『アリア・ギアス』って……なんだよ……もう、何十年も、神話生物に関わる『奇妙な冒険』を続けてきたが、その概念だけは、いまだに、いまいちよく分からねぇんだが……」


「巨視的な福音であり、不退転の呪縛でもある。そういうものだよ」


「ああ、なるほど……って納得すると思うか? そんな『辞書でテキトーに引いた言葉をくっつけたような戯言』を聞いて、何かしらが理解できると本気で思うのか、お前は」


「君が、アリア・ギアスを理解できるかどうかを気にするほど、ボクはヒマじゃない」


「……いや、お前は、だいぶヒマなヤツだと思う……」


 そんなセンの発言を受けて、

 ニャルは、くつくつと笑いながら、

 右手に持っている銀の鍵を、

 センの額に押し付けて、


「センエース。……君はまだ、頑張れる」


 勝手な願望を押し付けて、

 センを過去へと送るニャル。


 宣言の直後、銀の鍵が、力強く、眩く、輝く。

 その光が収束した時、センの姿は、この世界から消えていた。

 完全なる消失。

 それを見届けてから、ニャルは、



「さてと……それじゃあ、この世界線を締めようか」



 気づけば、世界の裏側は、

 グツグツと、煮立って、今にも爆発しそうになっていた。

 終わりかけの世界を、切なそうな顔で見つめるニャル。


 そんなニャルの背後に、

 時空の亀裂が入った。


「……」


 黙って、その亀裂を見つめているニャル。

 数秒後、亀裂の奥から、『虹色の美女』が現れた。

 出現と同時、まっすぐに、ニャルを見つめ返す虹色の美女。


 その虹色の美女に、ニャルは、




「やあ、ヨグちゃま。ちーっす」




 快活な挨拶を贈る。

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