40話 たぶん、これが一番はやいと思います。
40話 たぶん、これが一番はやいと思います。
亀裂の奥から現れた虹色の美女。
出現と同時、まっすぐに、ニャルを見つめ返す彼女に、
ニャルは、
「やあ、ヨグちゃま。ちーっす」
快活な挨拶を贈る。
その虹色の美女は、
ニャルの挨拶を軽無視して、
ソっとニャルから視線を外し、
煮立っている世界の裏側を見つめ、
「……クソガキ。貴様は頭が悪すぎる」
妖艶な声で、タメ息交じりに、そう言った。
ニャルは、ニっと笑って、
「そうなの? めちゃくちゃ賢いつもりでいたんだけど、それって、ボクだけの勘違いだった?」
「やり方が、あまりにも迂遠(うえん)すぎる」
「そうかな? ボク的には最短だと思っているけれど? 急がば回れってやつさ。『たぶん、これが一番はやいと思います』を地でいくスタイルだね」
「センエースに対する期待は分かる。あれは、なかなか面白い命だ。それは認める。可能性も、すでに、いくつかは示している。しかし、あまり入れ込みすぎると、ダメだった時に辛いぞ」
「……上位者ぶってアドバイスなんかしてくるなよ、ヨグ。あんたが言っていることなんか、こっちは、全部わかっているんだ。それでも、信じて、前に進むしかない。ボクは、センエースに賭けた。全部をベットした。センエースでダメだったら、たぶん、もう終わりだ」
「……」
「まさに、不退転の呪縛。際立って愚かな選択。けれど、やはり、ボクは、彼が、巨視的な福音たることを期待せずにはいられない」
「愚かだ」
「アリア・ギアス……いい言葉だ。マザコン感が強いってところがミソだね。プライマルなメモリの陰鬱(いんうつ)を背負った魂の覚悟。たった一つの希望を支える一筋の光」
そこで、ニャルは、『過去に飛んだセンエースの背中』を見つめて、
「超えてくれよ、センエース。頼むから。『センエースならたどり着ける』と確信したボクの直感を、単なる願望ではなく本物の希望にしてくれ」
そうつぶやいたニャルに対し、
虹色の美女は、
「私には貴様がイカれた殉教者にしか見えない」
どこか遠くを見ながら、ボソっとそうつぶやいた。
そんな虹色の美女に、
ニャルは、
「ところで、ヨグちゃま……なんで、あなた、女の姿をしてらっしゃるの?」
「私の意志ではない。センエースがそれを望んだ。自分の武器に宿る影は、出来れば美女がいい、と」
「……いや、まあ、そもそも、あんたに性別はないわけだけれど……でも、なんか……変な感じだなぁ。ボク的に、あんたは、イケメンじゃないとシックリこないんだよなぁ……」
「ちなみに、『ソル』も、どうやら、女体化しているようだぞ」
「え? マジで? ……うわ、マジだ。えぇ……うーわ、太陽モードがデフォじゃなくなっているじゃないか。うそだろ。いや、別に、見た目とか、どっちでもいいんだけどさぁ」
ニャルは、呆れたように天を仰いでから、
「センって、硬派なのか、女好きなのか、どっちなんだろうねぇ」
「どちらでもない。たんなるマザコンの厨二だ」
「……厨二はともかく、マザコンではない気がするなぁ……」
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