80話 何がいけない?

 80話 何がいけない?


 命令に従い、

 図虚空は、裏金庫に保管されていた強化パーツを、

 全て、ペロリとたいらげてしまった。


 結果、

 劇的に強化される図虚空。


 今までは、『刃物としての性能』は、

 ペーパーナイフとどっこいだったというのに、

 なんということでしょう。

 世界中の日本刀が束になってかかっても、

 太刀打ちできないほどの業物に大変身!




 ★




 ――その日の夜、

 なんだかんだ、

 イグとの再戦までこぎつけたセンは、

 これまでのように、瞬殺するのではなく、


「ちょっとだけ、試し切りに付き合ってもらうぞ」


 図虚空がどれだけ強くなったか、

 いろいろとためしてみた。


 あえて、腕を切り飛ばすなど、

 切れ味をためした結果、


(おお……GOOが豆腐のようだ……)


 これまでは、精神負荷MAXかつ全身全霊の一閃を放たなければ、

 傷一つつけられなかったのに、

 今となっては、

 サイコジョーカー『2~3』パーセントほどを積むだけで、

 あっさりと、GOOの肉体を切断するようになった図虚空。


(……凄まじく強くなれた……が、これでも、まだ、『壊れたウムル』に勝てるかどうかは微妙だな……)


 壊れたウムルの強さは、

 インフレがハンパなかった。


 ゆえに、これだけ強化された今でも、

 『勝てる』とは断言できない。


(もし、『首魁』の実力が『壊れたウムル』以上だった場合……今の俺でも、勝てはしない……もっと、もっと、強化しないと……)


 あらたな決意を固めつつ、

 センは、その日も、アイテム探索を続けた。


 ちなみに、当然、俊敏性も上がっているので、

 『紅院を閉じ込めた次元ロックを破る際のワナ』にはかすることもなかった。

 ゆえに、当然、マヒって動けなくなる、などという足止めもなし。


 センは成長している。

 大きく前進している。




 ★




 ――翌日の避難訓練では、何も起こらず、たんたんと訓練が進んだ。

 すでに、300人委員会は、センと出会っているので、

 過激な煽りであぶり出す必要性は皆無だった。


 この避難訓練で『死人が出る』ということも、事前に伝えてあったため、

 事前の準備段階で、『実弾入りの本物』が混じることもなかった。


 それでも、『万が一』の可能性を考慮し、

 センは、反町の付近を陣取り、

 問題が起きないか監視する。



 ――結果、何事もなく、

 避難訓練は終了。



 その後、グラウンドに全員集められ、

 壇上に上がった『派遣された警察官』の話を聞いている時のことだった。



「――というわけで、『テロリストに襲撃される』ということも『ありえない』とは考えず、常に、『もしかしたら』と考えながら行動してください。最後になりますが……」


 話のシメに入ったところで、

 ギギギッ、と、スピーカーのスイッチが入る音が響いて、

 直後、




『――舞い踊れ、真・幻爆の剣翼』




 その音声が耳に届くと同時、


(――くそったれっっ!)


 センは、黒木だけでも確保しようと、

 瞬間移動を試みたが、

 しかし、


「――くっっそぉおおっっ!!」


 今までの剣翼よりも、明らかに鋭い動きで、

 まるで、センをあざ笑うかのように、

 黒木の首から上をさらっていった。

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