46話 センエースエンジン搭載型。
46話 センエースエンジン搭載型。
『――【ウムル=ラト】のノーダメージ撃破を確認。【壊れたウムル=ラト】を召喚します』
謎の声のアナウンスが流れて、
奇怪なジオメトリが空中に描かれる。
――そのジオメトリの向こうから、
「……プハァ」
禍々しいオーラに包まれたウムル=ラトが出現した。
「クシュー、コホー」
完全に飛んでいる目。
異様な雰囲気。
明らかに壊れている。
「ギャガヤガヤガァアアア!!」
「やかましいぃいいい!」
軽いイラつきを叫びながら、
センは壊れたウムルの顔面に、軽い一発をブチ込んだ。
セン的には、挨拶レベルでしかないが、
「ブゴヘェエエエッッ!!」
壊れたウムルは、
ダンプカーにでもはねられたかのように、
勢いよく吹っ飛んで、
ベジャッ、と地面に激突した。
その様を見て、センは、
「……今の俺の前だと、素ウムルも壊ウムルも大差ないな。どっちもゴミだ」
ボソっとそうつぶやいてから、
「さて……本来なら、ここで、ウムルの体がトラペになるんだが……」
などと、過去を思いながら、『壊れたウムルの死体』の様子をうかがっていると、
『――【壊れたウムル=ラト】の瞬殺を確認。【センエースエンジン搭載型ウムル=ラト】を召喚します』
奇妙なアナウンスが流れて、センは眉をしかめる。
「せ、センエースエンジン? ……なんだ、その不穏なベイビーワードは……言葉の意味はよく分からんが、とにかく全力でイヤな予感がする」
などと、ビビリ散らかしていると、
そこで、ウムルの死体がグニュグニュと蠢きだし、
「……ぷはぁ」
完全人型に落ち着くと、
そこで、天を仰いで、
「……ついに、私は完全体となった。私の中で、大いなる私が脈動している」
吐息をもらし、
自分自身に酔いながら、
スっと、視線を、センに落として、
「それでは、センエースよ。私のウォーミングアップに付き合ってもらおうか」
そんなことを言ってくるウムルに、
センは、
「……いいだろう。ウォーミングアップでおしまいにしてやるぜ」
と、テンプレを決め込んでから、
軽やかに、空間を駆け抜けた。
(奇妙な圧力を纏いやがって……しかし、さほど、強くなったようには思えない……いや、強くなっている感じはする。覚醒ロイガーとトントンぐらいの数値は感じる。が、しょせんは、その程度だから、対処できないレベルだとは思わない。余裕ではないが、死ぬ気で頑張れば、普通に勝てる)
『センエースエンジン搭載型ウムル』に対する、
センの評価は『だいぶ強くなったっぽいけど、それだけ』という程度にとどまる。
数値的には、間違いなく膨らんでいるし、
妙な圧力も纏っている。
――が、それ以上の何かは感じない。
(……『ウザい切り札』的な何かを切られる前に、このまま圧殺してやる)
魔力とオーラを練り上げて、
ウムルに対して、神速の特攻をかますセン。
完全に、ウムルの顔面を捉えたと思った拳は、
――実際に、ウムルの顔面をシッカリと捉えていた。
「ぐぁああっ!」
吹っ飛んだウムル。
かなりの大ダメージを受けた模様。
ただ、
(……あんまり手ごたえがねぇ……直前で軸をズラしやがった……)
殴ったセンは、心の中で、ボソっとそうつぶやいた。
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