45話 俺はただの剣だ。
45話 俺はただの剣だ。
「……さっき言っただろう。俺は、どこにでもいる普通の高校生だ。こんにちは」
「時間帯的には『こんばんは』が正しいにゃ! 日本語は正しく、美しく使ってほしいにゃ!」
「語尾に『にゃ』をつけているやつにだけは言われたくねぇな」
軽やかな会話を繰り広げるセンと茶柱。
トコは、そんな二人のやりとりを、全力でウザがって、
「そんなことはどうでもええねん! ジブン、ナニモンやねん! あんなめちゃくちゃ強いGOOを一撃で殺したかと思ったら、もっとエグくなった化け物も、ボロボロになりつつも倒してしまうとか……え、なに、この状況?! 夢?! そうとしか思われへんのやけど! ちょっと、誰か、ホッペつねって!」
「了解にゃ!」
そう言いながら、茶柱は、
携帯ドラゴンを拳銃化させて、
ためらいなく、トコの顔面めがけて発砲した。
「どわぁっ!」
ギリギリのところで体をひねって回避したトコは、
ブチ切れ顔で、茶柱の胸倉に手をのばして、
「おどれぇ、ごらぁ、何してくれてんねん、あぁ、ぼけぇえ!」
まっきまきの舌で叫ぶ美少女。
そんなトコに、茶柱は、アホを体現した顔で、
「お望みどおり、強い刺激を与えて、目が覚めるかどうかを確認させて、現状が現実かそれとも非現実かを理解させてあげようとしたんだにゃ。はい、友達思いなツミカさんに拍手」
「このクソキ〇ガイがぁ……」
全力でイライラしているトコに、
紅院美麗が、
「じゃれている場合じゃないでしょう」
そう言いつつ、一歩、センとの距離をつめて、
「その仮面を外して、顔を見せてくれない? できれば、ボイスチェンジャーのスイッチも切ってほしいのだけれど? 私たちを救ってくれたヒーローが、どこの誰なのか、ぜひ知っておきたいから」
「俺が誰かなんか気にする必要はない。俺はただの剣だ」
などと、そんなことを言いつつ、
センは、重たい体をムリヤリ、たたき起こして、
「これから出現する化け物は、俺が皆殺しにする。命を殺すのが剣の仕事。しかし、勘違いはするな。俺は、お前らの剣じゃない。俺は俺のためだけに闘う。お前らはカスすぎて邪魔だから、今後、夜には出歩くな。獲物は全て、俺が独り占めさせてもらう」
そう宣言した直後、
センは、瞬間移動でその場を後にした。
★
その後、黒木に、サっと説明、
翌日、茶柱強襲、
そして、その夜、という、
既定の流れを経て、
センは、
『ウムル』との闘いに身を投じた。
もちろん、当然、素のウムルは楽勝だった。
「最初に戦った時は、あまりの強さに、ションベン漏れそうだったが……今、見ると、ちっちぇなぁ」
死にかけの蚊でも叩き潰すみたいに、
至極、あっさりと、ウムルを瞬殺してみせた直後、
「さて……ウムルの場合、難易度爆上げスイッチを押す前から、壊れたウムルになっていたわけだが……」
などと、思っていると、
既定の流れ通り、
『――【ウムル=ラト】のノーダメージ撃破を確認。【壊れたウムル=ラト】を召喚します』
謎の声のアナウンスが流れて、
奇怪なジオメトリが空中に描かれる。
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