75話 舞い散る閃光。


 75話 舞い散る閃光。


「どわぁああああ! どうする、どうする、どうするぅううう??!! いや、無理やてぇえええ! どないせぇいうねん、くそったれぇえええ!」


 ソンキーの『中』で、泣きわめいているトウシ。


 叫んでいる間も、

 実のところ、頭を回転させて、

 『どうにかできないものか』と考えている。


 それができるのが、彼の異常性の一つ。


「……ソンキーを覚醒させたところで無意味……となれば、もはや、ほんまに、どうしようもないぞ……ワシのカンスト問題に関しては、ぶっちゃけ、現状やと、進んでなさすぎて、話にもならん……最低でも5日はなかったら無理……タイムリープも、すでに、試してみたけど、余裕で次元ロックをくらってて無意味……あかん、あかん、あかん……ほんまに詰んどる……誰か、助けて……」


 普通に、しんどすぎて、

 救いを求めだすトウシ。


 ヒーローにあるまじき姿。

 必死に頭を振り絞るが、

 まったくもって未来が見えない。



「うぅ……うぅううううううううっっ!」



 恐怖の底で、

 混沌と抱き合いながら、

 トウシは、自分の中へと、

 深く、深く、深く、潜っていく。


 ちなみに、実のところ、その間にも、

 トウシは、アカシックレコードを高速巡回していた。


 とにかく、何かないかと、

 何か手段はないかと、必死になって、

 情報の大砂漠を駆けずり回っている。


 そんな、

 途方もない作業の中で、

 トウシは、


「……舞い散る……閃光……」


 たった一つの希望にたどり着く。

 先ほど、登場したばかりのヨグが口にした言葉、



『――田中トウシ。貴様は本当に素晴らしい。能力の高さだけで言えば、貴様は、舞い散る閃光を大幅に超えている』



 それと、目の前の情報がリンクする。

 舞い散る閃光に関するデータは、かなりの禁則事項で、ほとんど詳細には届かないのだが、


(能力の高さだけで言えば、ワシは、舞い散る閃光を超えとる……能力の高さだけでいえば……ということは……能力の高さという部分以外では……舞い散る閃光とやらの方が上という解釈もできんことはない……)


 そこで、さらに、トウシは、ソンキーの言葉を思い出す。


『俺は究極超神の序列2位』


(もし、ソンキーの言葉が、謙遜ではなく、ただの事実だった場合……舞い散る閃光とやらが一位である可能性は……ゼロやない……)


 頭の中で希望が灯る。


(1位神と、2位の闘神が手を組めば……あるいは、アウターゴッドの王を殺すことも……)


 情報が少なすぎるがゆえの、論理性が非常に薄い希望。

 もはや、ただの願望とも言える期待。


 しかし、今のトウシは、そこにすがるしかなかった。

 もはや、他に打てる手は思いつかない。

 だから、



「舞い散る閃光を……具現化する……」



 どうすれば、それを為せるのか、

 現段階では、さっぱり思いついていない。


 しかし、トウシは、口にする。


「これは、ワシにしか出来ん不可能や」


 道を見つけ、殉ずると決断すると、

 トウシは、無数のコードで『形』を整えていく。


 自身の携帯ドラゴン『エルメス』に、

 『舞い散る閃光』のデータをプログラミングしていく作業。

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