61話 私のオメガレベルは53万です。


 61話 私のオメガレベルは53万です。


「強さ以外にも……お前からは、何か、イヤな嫌悪感を覚える……ゴキブリが苦手とか、そういう類のアレではなく……俺に、何かを思い出させる……『明確な質量』を有する『マイナスの情動』……この感覚は、いったい、なんだ……」


 かつて、『第二~第九アルファ』を荒らしに荒らした『虫の化け物』がいたのだが、

 その虫の化け物は、真眼蟲賢王をモデルに改良された特殊モンスターである。


 ちなみに、『聖典』において、その虫の化け物は、この世界の神である『センエース』によって滅ぼされたとあるが、その時の両者の戦いは、まるで地獄の万華鏡のようであったと、聖典には記載されている。


「不愉快だ……心底……てめぇは、絶対に殺す……今の俺に、殺せない敵は一人もいねぇ」


 センエースは飛翔する。

 全身全霊をもって、オメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクトと対峙する。


 すぐに理解。

 別格。


「くそがぁああ! 硬すぎるぞ、てめぇ!」


 えげつない耐久力を誇るオメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクト。

 虫種は、耐久が高いタイプが多いが、

 オメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクトは、その中でも、

 最高峰のスペックを誇る耐久型のモンスター。


 耐久力だけではなく、攻撃手段も豊富かつ強力。


 口から、追尾してくるハエ型のミサイルを無数に放出してくるという、なんともキモすぎる攻撃で、センに絨毯爆撃をしかけてきながら、複数種類のジオメトリを同時展開し、無数のバラバラな属性魔法を放ってくるというスーパー弾幕型の戦闘スタイル。


 センの視界を埋め尽くす弾幕には、

 安全地帯など存在しない。


「どわぁああああああああっっ!!」


 飲み込まれる。

 濃厚な弾幕の嵐がセンを包み込む。


「くそったれがぁあああああ! ナメんなよ! 俺はセンエースだぞぉ! 全世界で最強の英雄様だ! その俺様がぁあ! てめぇみたいな虫けらに負けるわけねぇだろぉお! つぅか、負けちゃダメなんだよぉおおおおお!」


 ボロボロになりながら、

 しかし、センは、膨れ上がった自意識という底意地だけで、

 オメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクトの猛攻に耐えきり、

 その上、



「死ね、ごらぁああああ! ――龍閃崩拳っっっ!!!!!」



 最大級の超必殺技をブチかましていく。

 渾身の一手。

 会心の一撃。


 ――けれど、


「――空気よめやぁ、虫ケラァ! このセンエース様の超必を、なに、普通に耐えてくれてんだぁ!」


 センエースの龍閃崩拳を、まともにくらっておきながら、

 ピンピンしているオメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクト。


 『圧倒的なステータス差』という破格の暴力が重くのしかかる。

 『オメガレベル530000』は伊達ではない。


「くそったれが……胸がザワザワする……その『なかなか死なねぇ』というウザさが、俺の深部をかきみだす……」


 魂魄の奥に刻み込まれた『何か』がシクシクと揺らめく。


 だが、どれだけ頭をひねったとて、答えにはわずかも届かない。


 センは、そんな、思考の混沌の中で、

 必死になって、オメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクトと向き合い続ける。

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