79話 砂利よりはマシな石ころ。


 79話 砂利よりはマシな石ころ。


「ゼノリカってのはすげぇなぁ」


 純粋な賛美を送った。

 嘘偽りない本音。


 現状、レベル差の問題があるので、

 『出力』で言えばセンの方が、圧倒的に上なのだが、

 しかし、そんなことは、今のセンにとって、

 心底、どうでもいいことだった。


 現状におけるセンの認識の上では、

 オメガレベルなど、たまたま手に入れたハリボテでしかない。


 ゼノリカの前だと、さすがに、そのハリボテを誇る気にはなれなかった。


「お前らみたいなのが、まだほかに30人もいるのかよ。ゼノリカの層の厚さはすさまじいな」


 そんなセンの言葉に対し、

 アクバートが、


「貴様の認識には『修正すべき個所』が無数にある」


 ハッキリとした前を置いてから、

 幾分長い息を吸って、


「ゼノリカの天上の中で、私たち程度の『雑魚』は35人。私たち九華の『十席』は、いくらでも代用がきく雑用係にすぎない」


「……ハッタリをかましている……って顔じゃないな。『ゼノリカの実態』が『実際のところどうか』はともかくとして、あんた自身は、『その認識』を、揺るがない事実として、ガチで受け入れているっぽい……」


 『演技の可能性を疑う無粋』を省いたのは、

 アクバートの目があまりにもまっすぐだったから。


 センは、アクバートの目をジっと見つめ、


「……『ゼノリカの天上、九華十傑の第十席』……てめぇらが、何度も同じ自己紹介をするから、さすがに覚えてしまったワケだが……」


 と、軽く前を置いてから、


「短期記憶が壊滅的なこの俺に、フレーズ丸々を覚えさせるほど、てめぇらは、その身分を大いに誇っている。――にも拘わらず、あんたは、自分たちをザコだと言う。この辺の矛盾を、俺はどう理解すればいい?」


「矛盾などない。ゼノリカの天上という地位は、私を支えてくれている誇り。常人の中にまじった時、私は『ひときわ輝く宝石』として耳目をあつめるだろう。しかし」


 そこでアクバートは、『天』を指さし、


「天上人の中にまじった時の私は、『砂利よりはマシな石ころ』に過ぎなくなる。それがゼノリカの天上という狂気の世界。正しく『ゼノリカの天上』を知れば、抗う気力を根こそぎ失うだろう。丁寧に教えてやるから、耳の穴をかっぽじれ」


「……」


「私たち『十席』の上には、私たちを遥かに凌駕した真なる九華が8人。九華十傑の第一席から第九席。誰もが破格のスペシャリストであり、神を名乗るべき力を持つ超越者。そんな真なる九華のワンランク上に、5人の上司。五聖命王。特別な地位と力を持つ神々の中間管理職。その上に、別格の帝が3人。三思天帝。神を超えた神々。命の壁を超えてしまった別次元の天帝。その上には、九華・五聖・三至を束ねる『神の親衛隊』――『PSR部隊』。PSRの隊長は、私が100万人いても、かすり傷一つ負わせることは叶わないであろう超越者の中の超越者。三至すらも跪かせる女神の中の女神。――その上におられるのが神の王。聖典の中心。この上なく尊き命の最果て、センエース神帝陛下」


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