24話 コールサインは、

 24話 コールサインは、


「……わ、私は……どうすれば……」


 と、すがりついてくるカズナに、

 センは


「てめぇがどうすべきかなんて、そのぐらい、てめぇで考えろ……と言いたいところだが……」


 そこで、センは、周囲を見渡しつつ、


「まあ、さすがにコクか……」


 と、つぶやいてから、


「……『魔〇ブウが、一斉掃射をかまして人類を皆殺しにした時』の『サ〇ン』みたいに、選ばれて生き残っているヤツがいるかもしれねぇ。もしくは『テン〇ンハン』みたいに、剣を避けたやつも……いや、いるかなぁ……見えない剣をどうやって……いや、まあ、でも、現状だと『絶対にいない』ともいいきれねぇ。というわけで、生き残りを探して集めておけ」


「あつめて……どうするの?」


「人手は出来るだけあったほうがいいだろ? それに……」


「……それに?」


「俺は『一人でも生きていける』が……たいていのやつは『そうじゃない』だろ?」


「……」


「背負ってやるよ。もし、生き残っているやつがいるのなら、お前ふくめ、全員の命を、この背中で、引き受けてやる……」


「……」


「必ずどうにかしてやる。何があろうと、俺は最後まで折れねぇ。最後の最後まで、お前らの前に立ち続け、この『クソったれの運命』に抗い続けてやる」


「……」


「すべての絶望を殺してやる。すべての命の希望になってやる」


「……」


 そこで、センは、目を閉じた。

 まぶたの裏を見つめたまま、

 『ここではないどこか』を睨みつけ、






「……ヒーロー見参……」






 最後にそう宣言すると、

 センは、瞬間移動で、蓮手の元へと向かった。


 ――しばらくの間、

 カズナは、センの残影を見つめていたが、


「……っ」


 歯を食いしばって立ち上がり、


「……確か、屋上に……ドラゴンホークがあったはず……」


 ドラゴンホークは、紅院家が所有している軍用ヘリの名前。

 紅院正義は、携帯ドラゴンが敗北した時のために、

 いくつか『抵抗用の兵器』を用意してあった。


 ドラゴンホークは、その中の一つ。


 上位のGOOが相手だと、携帯ドラゴン以外の武力は無意味だと理解していたが、しかし、性分的に、何もしないわけにはいかなかった。


 カズナは、センが置いていった正義のスマホをつかむと、

 そのままの流れで、正義の懐から、『カギの束』や『USB』など、

 今後、必要となるであろうアイテムを奪い取り、


「……隕石が落ちたとかじゃない……人が全滅しただけなら、インフラが完全に死ぬまで、まだ少し時間はあるはず。まずは、各国の委員会メンバーに電話。……超・緊急事態用の回線なら、管理者不在でも、しばらくは使えるはず……そのあとは、ラジオで、世界中に呼びかける……あと、食料と水……紅院家のシェルターに、50人分が20年分はあるけど、足りないかもしれない……世界中からかき集めて保存……あとは……」


 カズナは、自分に出来ることを必死になって考える。


 今のカズナには、心に希望がある。

 だから、考えて、行動することができる。


 どれだけ絶望的な状況下でも、

 希望があれば、人は前を向くことが出来る。



(……燃料は、問題ない。いつでも飛べるように、調整もされている……当たり前の話……紅院正義は、無用の長物を置いておく人じゃない。常に準備は万全……そういう人だった……)



 ドラゴンホークのコックピットに乗り込んで、

 正義から奪ったUSBを差し込んで、

 セッティングを開始する。

 システムを起動させると、

 音声機能が作動して、


『バックドアコードのエントリーを確認。声門認証を行います。紅院家に登録されている本名とコールサインをお願いします』



「本名、久剣一那。コールサインは――」



 名前を口にしてから、

 カズナは、かみしめるように、




「――『エキドナ03』。命の王に仕える剣だ」




 覚悟を宣言した。


 最後の一言は必要なかったが、

 どうしても言いたくなったから口にした。

 それだけの話。

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