39話 邪悪は、全てセンエースの糧となる。


 39話 邪悪は、全てセンエースの糧となる。


「貴様ら下等種が絶望的に脆いということくらいは知っている。貴様らはただのゴミ。存在価値のない虫ケラにすぎない」


 マイノグーラは、ほんの少しだけ不機嫌を見せてから、

 たんたんと、自分の言いたいことだけを、

 マイペースなタイミングで、

 軽く、センを睨みつつ、


「貴様は、人間にしては小マシな魔力を持っている。それは認める。というか、見たままの事実。……しかし、その程度のチッポケな存在値で、私が召喚したカイザーウイングケルベロスを倒すとは……信じられない。正直、驚いている。カイザーウイングケルベロスは、少なくとも、貴様の5倍以上は強いはずなのに……」


 たんたんと、そう言いつつ、

 センをじっくりと観察して、


「そのナイフ……この私の目をもってしても見通せない……信じられないほどの潜在魔力。……なるほど。そのナイフが本体で、貴様は傀儡(くぐつ)か」


「……心情的には否定したいところだが、しかし、俺は俺が何者なのか、実際のところ、完全に理解しているわけではないから、完全否定するのは、なかなか難しいところだな。……俺が、図虚空を、かなり頼りにしているのは事実だし」


 そう言いつつ、

 センは、全身をほぐすストレッチを開始する。


 ある程度、体が温まったところで、

 センは、


「奪い取れ」


 図虚空にカイザーウイングケルベロスをたべさせる。


 その、なかなかグロい映像を目の当たりにして、

 中学生たちは、軽く引いていた。

 が、そんなことはお構いなしに、

 図虚空は、カイザーウイングケルベロスを咀嚼し続ける。


 もぐもぐしてから、ペっと吐き出すと、

 デフォルメされた犬が、小さな翼をパタパタさせつつ、


「……うぉお……高貴な神の使い魔である私が……カスみたいなガキの眷属になってしまうとはぁ……あぁ……」


 悲痛の声をあげるカイザーウイングケルベロスに、

 センは、


「今後、お前の名前はカイケルだ。いいな」


「こんな惨めな姿に変えただけでは飽き足らず、名前までも奪うか。鬼畜の諸行」


 ぶつぶつと、不満と文句を口にするカイケルに、

 センは、


「俺にタテついた邪悪は、全て、俺の糧となる。イヤなら、清廉潔白に生きるしかない。まあ、たとえ、清廉潔白に生きていたとしても、使えそうなら、奪い取らせてもらうが」


「最悪だな、貴様!」


「この俺の眷属になれるんだぞ? むしろ、喜ばしいことじゃないか」


「そういうセリフは、高貴な神だけの特権。貴様のような頭悪そうなガキが口にしていいものではない。おこがましい」


「元気いいねぇ。なにかいいことでもあったのかい?」


「悪い事しか起こっていない」


 小気味いいテンポでセンを拒絶するカイケル。

 しかし、強制的に眷属にされてしまっているので、

 逃げることも、さからうことも出来ず、


「まあ、なにはともあれ、今後、お前は、俺の力の一部。共に、死ぬ気で地獄にあらがってもらう。記念すべき最初の闘いは、あの女神との死闘だ」


「い、いやだ……勝てるわけがない……マイノグーラはアウターゴッドだぞ……」

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