89話 おそろしくはやい書き込み削除。


 89話 おそろしくはやい書き込み削除。


 『センエースを持ち上げようとしているメディアの動き』に対し、

 一般の方々がどう思っているか知りたくなり、

 掲示板を覗いてみると、


(……まあ、だろうなぁ……)


 『え? 誰?』という意味合いの意見が大半で、

 世間様は、とにかく混乱している様子だった。


(……この掲示板……今朝、立ち上がったばかりのスレッドなのに……なんで、こんなに、削除された書き込みが多いんだ?)


 掲示板を下へ下へとスライドさせていくと、

 『困惑している書き込み』や『疑問の声』や『それに対する予測解答』や『わけもわからないまま、しかし、とりあえず、メディアに流されて、センに感謝している発言』などは残っているが、しかし、センエースという謎のヒーローに対して『批判的な声』などは一切見当たらない。



(この、大量に削除されている書き込みは、おそらく、悪評や誹謗中傷……そういう系の書き込みは、たぶん、書き込んだ瞬間に消されている)



 注意深く観察していると、

 『センエースって誰だよ。日本人? なんで、このキラキラネームのヤツ、こんなアホみたいに持ち上げられてんの? 意味わからんすぎて気が狂いそうなんだけど。どういうプロパガンダ? キモいんだけど』

 という書き込みが見つかったのだが、

 しかし、その書き込みは、瞬く間に削除されてしまった。


(……おそろしくはやい書き込み削除……俺ですら見逃しそうになったね)


 何がどうなっているかは分からないが、

 しかし、『否定的な書き込みが、異常な速度で削除されている』という事実も、またたくまに、ネットの中では広がっていき、その噂は、さらに、尾ひれをつけて加速していく。


 『どうやら、センエースを批判すると逮捕されるらしいぞ』

 『らしいじゃない。事実。センエースに対して殺害予告したバカは秒で捕まった』

 『ちなみに、そいつは死刑になる』

 『なんで、お前らは、そんなことを知ってんだよ』

 『そのバカの家に突入を命じられた特殊部隊の一人だから。ちなみに、その事実を拡散するようにと上から命令を受けた。人生終わりたくないヤツは、センエース批判をやめろ』

 『嘘くさすぎて、逆にガチくさいな』

 『そろそろ、ニュースが流れる。逮捕された男の詳細は、東京都足立区在住の30歳公務員の男だ。名前は反町太陽(そるまち たいよう)』

 『おい、マジじゃねぇか。ニュースみろ。今、本当に、反町って公務員がセンエース批判の罪で逮捕されてやがる』

 『逮捕されたヤツは、他にも何人かいる。見せしめとして、捕まったヤツの個人情報は、家族・友人・知人に関することまで、すでに、ネットで拡散されている。社会的にも実質的には血祭にあげられる。ちなみに、反町太陽はマジで死刑になる』

 『死刑とか、そう簡単になるものなの?』

 『センエースに対しての冒涜だけは、常に極刑がベースになる。センエースは、この星でもっとも尊い人類の王だ。侮蔑は絶対に許されない』

 『――ネットは匿名性が高い、と、まだ無邪気に信じているそこのバカに伝えておく。その気になれば、お前の居場所を特定するのは、まったくもって難しくない。芸能人や政治家を叩くのは好きにすればいいが、センエースだけは非難するな。お前の人生が終わるぞ。これは、本当の忠告だ』

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