44話 経験値を稼ぐ時はね……


 44話 経験値を稼ぐ時はね……


(いつだって、未来は見えないもの。それでも踏み出す勇気が、貴様にあるか?)


「なんでもかんでも勇気って言えばカッコつくと思うなよ」


 などと、いったん、反論してから、

 センは、


「……んー……うーん……」


 さらに、1ターン悩んでから、


「オメガバスティオン化した化け物どもを殺すには……そのぐらいの覚悟は必要か……」


 ボソっとそう言ってから、

 センは、


 ――修行僧スイッチを押した。


 スイッチを押しても、

 現状だと、特に何か、目立った変化が起きたわけではない。


 ――と思っていたのも束の間、



「……ん?」



 凶悪な気配を感じて、

 窓の外を見てみると、


「うわ……こんな昼間っから、ハッキリと、ジオメトリが刻まれてんじゃねぇか……」


 空に刻まれた魔方陣からは、凶悪な魔力の波動が放たれていた。



「あれ、明らかに、アウターゴッド級が出てくるやつだろ……」



 などと思っていると、

 そのジオメトリからは、メタル化されたロイガーみたいなヤツが出てきて、

 センに視線を向けると、


 『さあ、かかってこい』と言わんばかりに、くいくいっと手招きをする。

 そんなメタルロイガーを尻目に、センは、ボソっと、


「……あれ、放置したら……どうなる感じ?」


「もちろん、この世界が終わる。あれは、アウターゴッド級の化け物。排除しなければ、すべてが壊される」


「……だよねぇ……」


 タメ息をついてから、

 センは、グっと腹の底に気合をいれる。


 そこから先は物言わぬ死闘。

 余計な言葉を交わすことなく、

 ひたすらに、ボコスカと、全身全霊で殴り合う。


 今の自分に出来る全部を賭して、

 センは、メタルロイガーと対峙した。


 メタルロイガーは、すさまじく強いが、

 ロイガー・オメガバスティオンよりは弱かった。

 覚醒ロイガーの『硬いバージョン』といったところ。


 闘いの途中で、センは気づく。



(こんだけ派手に戦っているのに……誰も、俺達のことを気にしてねぇ……)



 普通に見えているはずなのに、

 誰も二人の闘いに反応していない。


 その疑問に、ヨグシャドーがこたえる。


(あの『メタルロイガー』と、今のお前は、『いしころぼ○し』をかぶっているみたいなものだと思えば問題ない。誰にも認知されないし、攻撃の余波も、虚空のアリア・ギアスによって完全に統制されているので気にしなくていい。現状では、『貴様の経験値稼ぎ』に、世界の全てが協力してくれる)


「マジでか……すげぇ状況だな……つまり、現状はあれか? 『経験値を稼ぐ時はね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか、救われてなきゃだめなんだ』……という状態だな」


(まさにその通り。今後、貴様は、誰にも邪魔されず、自由に舞える。ただし、救われているとは言えない。とても悲惨な状態だ)


「……悲惨?」


(これまで、貴様は、あの女どもに嫌われてこそいたが、しかし、同時に、感謝もされていた。ある意味で、強く愛されていた。『ダメ男ほどかわいい理論』も、わずかに働いていた。しかし、ここから先、貴様は完全に孤独。世界を救い続けても、誰にも理解されない。まるで、装置のように、たんたんと世界を救い続ける。その孤独に、はたして、貴様は耐えられるかな?)


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