32話 革命のきざし。


 32話 革命のきざし。


「まさか、ここまで爆発的に強くなれるとは思っていなかった。収穫祭、ここに極まれり。さすがに、もう、アウターゴッドにも勝てるんじゃね?」


 そんなセンの言葉に、

 ヨグシャドーは、




「貴様の存在値は、およそ100億。『神』の中では、中間くらい。ちなみに、私の本体は神の最上位。存在値は、17兆を超えている」




「……じゅうなな…………ちょう?」


「その数字差を聞いても勝てると思うのなら挑めばいい。ハッタリだと思うのは自由だが、しかし、『どうせハッタリだろう』とタカをくくって挑んだ場合、死ぬほど後悔することになるだろう」


「……」


「言っておくが、17兆は基本ベースにすぎない。そこからも、ギアを入れていけば加速する。私の本体の『最終形態』は、『基本ベース』の10倍以上の力を持つ。最低でも170兆。それが、私の本体だ。対する貴様は、たかが100億。――さて、それを聞いてどうする?」


「……」


「ボーナスタイムは、まだ数日残っている。貴様は、まだまだ強くなるだろう。もしかしたら、まだ、10倍ぐらい強くなるかもしれない。……しかし、それがどうした? 10倍強くなったとしても、しょせん1000億。なんとか、ウルトラレアなアイテムを掘りまくって、運よく100倍以上強くなれたとしても、ようやく1兆という程度。最低でも『その100倍強い私の本体』に勝てると思うか?」


「……」


「現実を見ろ、センエース。貴様にのこされた道は一つしかない。諦めて、すべてを受け入れろ。貴様は、もう、童貞ではいられないのだ」


「……」


「言っておくが、これが、最後の警告だ。もう二度と同じことは言わない。センエース、選択しろ。前に進め。少年を卒業しろ」


「……」


 ずっと、ずっと、ずっと、

 煮え切らない態度のセンに対し、

 ヨグシャドーは、


「……」

「……」


 ついに、愛想をつかし、



「――貴様の意志は理解した。残り数日の短い命を好きに使えばいい」



 そう言うと、

 ヨグシャドーは、ふて寝をするように黙り込んだ。


 そんなヨグシャドーに背中を向けて、センは、その後も黙ったまま、ここではないどこかをずっと見つめていた。




 ★




 けっきょくのところ、

 何の進展もないまま、

 今日も、センは、童貞を貫いている。


 何度か、覚悟を決めかけたこともあったのだが、

 しかし、最後の最後で、チキンが暴走して、

 一線を超えることはなかった。



 そんなヘタレ男に待っていた『今日』は、当然悲惨なものになる。



 停滞した日々を後悔しつつ、

 学校で授業を受けていたセン。

 フと、窓の外を見てみると、


(……なんだ、あのでけぇジオメトリ……)


 学園の空を覆い尽くすほどの、巨大な魔方陣が浮かんでいた。


 魔方陣が見えているのはセンだけではないようで、

 すぐに、他の面々も、その巨大なジオメトリの存在に気づき、


「ちょ、あれ、なに?」

「え? えぇ?」

「紅院家の超技術……的な?」

「いや……ちがうんじゃね……さすがに……」


 誰もが、ただただ困惑している。

 何が何だか分からないという顔で、

 しかし、本能は、あれが『極悪にヤバい』と理解しているらしく、

 この奇怪な状況に対して、

 誰もが純粋な恐怖を感じていた。

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