52話 ラジオ体操がはじまる前のアクビ。
52話 ラジオ体操がはじまる前のアクビ。
「お前さぁ……俺が『一度も言っていないこと』を、さも『常に言っているかのよう』にのたまうの、やめてくれない? 『へのつっぱり』も『究極なんたら』ってセリフも、俺は、一度も口にしたことがないんだわ」
センは、鬱陶しそうにそう言ってから、
ふと、視線をそらし、
「……いや、『へのつっぱり』に関しては、どっかで、ネタとして言ったことがあるかもしれんが……まあ、でも、後者のヤツは絶対に言ったことがないぞ。なんだ、究極超……えっと、なんだっけ?」
「究極超神の序列一位。神界の深層を統べる暴君にして、運命を調律する神威の桜華。舞い散る閃光センエース。――それが、君のキャッチコピーだろう?」
「そんな、イカれた誇大広告を背負って生きていけるほど、俺のツラの皮は厚くねぇよ」
そう言いながら、
センは、『よっこらしょ』とばかりに、
ゆっくりと立ち上がり、
「まあ、なんにせよ、これで、二次予選突破……なんとか、次につなげることができたな」
などと、たわけたことを口にするセンに、
オメガシャドーは、
「何を言っている?」
『アホなことをぬかすな』とでも言いたげな顔で、そうつぶやく。
そんなオメガシャドーの言動に、イヤな予感を覚えたセンは、
しんどそうな顔で、
「……え? これで終わりじゃないの?」
「当たり前だろう。オメガ火ゴブリンの討伐など、ラジオ体操前のアクビにすぎない」
「ラジオ体操ですら無いんかい……ここから先、どんだけのことをやらせる気だよ」
「これだけのことをやらせるつもりだ」
そう言いながら、
オメガシャドーは、取り出した二枚目の魔カードを破り捨て、目の前にジオメトリを出現させる。
そのジオメトリから出現したのは、
「……えぇ……うそぉん……」
出現したのは、
『ダークサイドに堕ちた』っぽい色をした『バスタードラゴン』。
完全に発狂した目をしており、知性のかけらも感じない。
だが、そこに『隙(すき)』を感じるかというと、まったくもって、そんなことはない。
むしろ、『放たれている威圧感』は常軌を逸しており、
そのハンパではない威圧感に、
センの魂魄は、当たり前の恐怖を覚えた。
野球において、
『見事にコントロールされた品のある球』の方が、
『ゲームメイクの面』では、確実に上なのだが、
『勢いがハンパない荒れ球』の方が、
『恐怖という面』においては、圧倒的に上――
みたいな感じだろうか。
「こいつは、オメガバスタードラゴン。オメガレベルは、驚愕の『630』! 数値だけで言えば、オメガ火ゴブリンの三倍だが、実際の『強さ』は、ナメ〇ク星到着時の『クリ〇ン』と『フリ〇ザ様』ぐらいの差がある」
「いや、頭おかしいんか? 今、大苦戦のすえ、やっとのことで『ク〇リン』を撃破したのを見ていたよな? 『あの時点のソン〇ハン』と同等程度でしかない俺が、『フリ〇ザ様』をどうにかできるわけねぇだろ」
「それはそっちの事情であり、私には関係ない」
「……いや、アレを召喚したのはお前だから、お前は、ガッツリと関係者……というか、普通にゴリゴリの加害者なんだが」
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