7話 頭がおかしくなりゅ。


 7話 頭がおかしくなりゅ。


 ――そこから、センは、さらに、

 アイテム探索に没頭することになった。


 たまに見つかる『オメガレベル上昇系のアイテム』で、

 徐々に、徐々に、オメガレベルを上げていきつつ、

 同時に、図虚空の強化もかかさず、

 自身の戦闘力も底上げしつつ、

 銀の鍵も探しつつ、


 必死になって、このイカれた無限ループ地獄と向き合い続けた。


 そして、この週も、

 また、当たり前のように、全滅エンドを迎えた。


 終わり方は、これまでと大差ないが、

 一つだけ違う点は、

 本当に『一人』になってしまったということ。


 これまでは、カズナも一緒に地獄を彷徨っていたが、

 今のセンは、世界に、ただ独りで立ち尽くす。


「……ああ……これは……辛いな……」


 誰もいなくなった世界で独り、ボソっと、本音をこぼすセン。


「ああ……きっつぅ」


 誰かの前では言えない本音を垂れ流しながら、

 センは、天を仰いで、深いため息をついた。



 ★



 どれだけキツかろうが、そんなもん関係なく、

 センは、シッカリと、

 時間一杯、銀の鍵を探し尽くしてから、

 『自分はまだ頑張れる』と強い覚悟で宣言し、過去に飛んだ。


 自室で目を覚ましてすぐ、



「……オメガレベルも引き継がれているな……よし」



 まずは、そこの確認をしてから、


「図虚空……オメガレベル……俺自身の武力……どれも、まだまだ底上げできる……全部をシッカリと磨き上げれば……アウターゴッドに勝てる……可能性も……なくはない……はず……きっと……たぶん……おそらくは」


 まったくもって確定はしていない。

 『人間ごときが、どれだけ頑張ろうが、アウターゴッドには勝てません』

 という『あまりに無慈悲な結末』に落ち着く可能性だってゼロではない。

 しかし、『ソレ』を前提にしたところで、

 一歩も前には進めなくなるだけなので、

 センは、


「勝てる……殺してやる……アウターゴッドだろうが、なんだろうが……この糞ったれなループを終わらせるためなら……なんだってしてやるよ」


 奥歯をかみしめながら、そう宣言すると、

 センは、黒木に電話をかける。


 数回のコールのあと、


「……はい……誰ですか?」


 前回同様、

 警戒して、自分の名前は名乗らない。

 そんな彼女に、


「お前が小三の時に書いていた自作小説の主人公の名前は……ソンキー・ウルギ・アース……間違いないな?」


 前回と同じ流れで協力を要請する。


 スムーズに、滞りなく、彼女と合流し、

 よどみなく、契約を結ぶセン。


 そして、また探索。

 世界が終わったら、また銀の鍵を使い、

 ループして、また、同じ話をして協力を要請する。


 それを繰り返した。

 繰り返して、

 繰り返して、

 繰り返した。



「……はは……頭おかしくなりゅぅ」



 何度も白目をむいて泡をふきながらも、

 それでも、センは、歯を食いしばって、地獄と向き合い続けた。


 普通なら、完全に頭がおかしくなる状況だが、

 センは、ラリった目で世界を睨みつけて、


「折れてやらねぇ……降りてやらねぇ……絶対にっ!」


 食いしばりすぎた奥歯が、

 『いい加減、勘弁してくれ』とばかりに、

 大声の悲鳴をあげているが、

 『そんなもんは知ったこっちゃねぇ』とばかりに、

 センは、鋼の無茶を貫き通す。



 何度も、

 何度も、

 何度も、

 何度も、

 何度も、何度も、何度も……



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