13話 彼女はウザすぎる。


 13話 彼女はウザすぎる。


 ――色々と悩みはしたが、

 『やっぱり無視するほうが怖そうだから、とりあえず、行くだけ行ってみようか、タルいなぁ。二秒以内に、地球、終わればいいのに』

 と『勇気ある決断』をした才藤は、

 放課後、指定された場所へと足を運んだ。


 あえて、センとは時間をズラそうと、

 色々とタイミングをはかりながら、

 多目的室にたどり着いた才藤。


 しかし、なぜだか、


「げっ」

「げっ」


 完全にピッタリと同じタイミングで多目的室にやってきた二人。


(うわ、かぶった……)

(うわ、かぶった……)


 まるで双子のように、

 心の中で同じことを思い、

 顔面で、それを表現する二人。



(かぶんなや、きっしょいなぁ……)

(かぶんなや、きっしょいなぁ……)


 などと、つぶやきつつ、

 ここで踵をかえすのは、それはそれで、またキモいので、

 仕方なく、二人は、一列になって、

 夕焼けが照らす多目的室のドアをあけた。


 すると、そこでは、


「……お」

「……ん」

「……ぇ」


 そこでは、一人の美少女が机に腰掛けてスマホをイジっていた。


 センは、彼女の容姿を見て、これほど、妖精や天使等の幻想的な比喩が『似つかわしくない』美少女は珍しいと思った。


(また、美少女が出てきた……遭遇率高ぇなぁ……)


 時代に適合し尽した完璧なメイク。

 流行の半歩先を行く百二十点のファッション。

 金の匂いをギリギリ感じさせないラインの、しかし仄かな高貴さを漂わせる装飾物。

 美しさを『力づくで平服』させているような、

 過剰といっても過言ではないほど時代に合致しすぎた、

 『完璧』をやりすぎている美少女。


 ――その『人間味を失ったような美少女』は、

 五秒ほどかけて、

 才籐とセンの両者を観察すると、



「あんたら、誰?」



 ナチュラルミディの銀髪をかきあげながら、そう言った。

 凍てつく瞳と、斬るような口調。

 ――瞬時に理解。


 彼女は、才藤とセンに対して何の興味も抱いていない。


(……態度、イカれてんな、この女……無駄に顔面偏差値が高い女は、これだから始末が悪い。容姿の出来がいいというだけで、どうして、そこまで調子に乗れるかね。理解に苦しむ)


 純粋にイラっとしたセンは、

 だから、ほんの僅かな抵抗として、

 常識という名の脆い武器を片手に口を開く。


「人に名前を尋ねる時は、まず――」

「誰かって聞いてんだけど」


 銀に輝く三白眼で睨まれて、センは思わず息をのむ。


(……そんな、飢えた猛獣みたいな目で睨まんでも良かですやん)


 結果、素直。


「……センエースです。一年です。こんにちは」


「バカ? この学校の制服、ネクタイ見れば学年わかるんですけど? バカ?」


 普通にイラっとしたセン。

 そんなセンから視線を外して、

 彼女は、才藤を睨み、


「そっちのあんたは?」


「……才藤零児です。ご覧の通り一年です。はじめまして」


 ネクタイを指さしながらそう言うと、


「あんたの学年とか興味ないから」


 どうでもよさそうにそう言うと、

 その美少女は、二人の存在そのものを意識から完全に消し去って、

 文明の利器に集中しなおした。


 センと才藤の二人は、つい、たがいに、顔を見合わせて、


「「えぇ……」」


 と、互いに、不快感を照らし合わせる。

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