67話 どこへいこうというのかね。


 67話 どこへいこうというのかね。


 無数の属性魔法攻撃と、ハエミサイルの絨毯爆撃。


 そんな、嵐のような弾幕に対し、

 センは、



「オメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクト……ハッキリ言うぜ、お前、軽いだろ」



 軽くテンプレをぶちこみつつ、

 歩くような速度で、ヒラヒラと弾幕を避けながら、

 オメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクトの目の前までくると、


「閃拳」


 オメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクトの中心めがけ、

 ……スっと、小さな虫をつぶすような緩やかな動きで、拳をつきだした。


「ギギャゲッ!」


 ソっと触れるような、

 それだけの拳でありながら、

 しかし、オメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクトは、

 トルネードに巻き込まれたように、

 全身がズタズタの細切れになって死に絶えた。


「……お前が軽いというか……俺が強すぎるな……」


 ニィィィと、黒く微笑みながら、 センは、


「お前が軽いのも事実だが、あまりにも、俺のスペックが高すぎる。滅びる気配をみせず、何度でも蘇るのはお前じゃねぇ。俺だった」


 自分の両手を見つめ、


「最強だ……間違いない……『俺』という、この生命体こそが、間違いなく最強」


 恍惚の表情で、


「誰が俺を超えられる? これほどまで高みに至った俺に、一体、ダレがあらがえる? くくく……くく……あはーははははははははっ! きひひひひ! えへへへへへ! だはははははははははははははは!!!!!」



 狂ったように笑う。


 『絶望』の底にいる間は、

 『センエースとしての器』が強く前に出ていたが、

 『希望』を前にしたことで、

 『弱い脆さ』が前面に出てきてしまった。


 『生命のバランスを保つ』のが、

 『いかに難しいか』が、今のセンエースを見ているとよくわかる。


 本来のセンであれば、鋼の精神力で、

 ムリヤリ、生命のバランスを保たせるのだが、

 オメガレベルの急激な上昇によって、

 その部分が、あまりにも不安定になってしまっている。


 『センエース本来の部分』と、

 『オメガレベルによる発狂』の二つが、

 今もなお、センの中でせめぎ合っている。



「……ギギギ……」



 1002回目の復活をはたしたオメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクト。

 その様子は、明らかにおびえているようだった。


 そのザマを見たセンは、嗜虐心マックスの笑みで、


「伝わってくるぞ、虫ケラ……てめぇは、俺におびえている。非常に気分がいい。俺の全身は、今、射精をも遥かに超越した至高の愉悦に包まれている」


 普段のセンでは絶対に口にしないようなセリフを並べながら、

 ニタニタと黒い笑顔のまま、

 ゆっくりと、オメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクトのもとに近づき、


「俺の気高さを知れ。虫ケラ。俺こそが神だ。さあ、今こそ、神の王を名乗ろう。俺は……究極超神の序列一位。この世もあの世も含め、並ぶ者のない最強神だ」


「……ギギ……」


 センの傲慢(ごうまん)な覇気に気圧され、

 オメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクトは、

 センに背中を向けて逃げ出した。


 その様子を見たセンは、


「ははは、どこへ行こうというのかね」

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