66話 センエースのたたかいはこれからだ!


 66話 センエースのたたかいはこれからだ!


「無意味な全能感やプライドという邪魔な贅肉にまみれて、純粋な疲労と絶望の前に立ち尽くして、一寸先の未来さえ見失って……それでも、君が、前を見続ける理由はなんだ……」



 オメガシャドーの視線の先で、

 センは、地獄と真摯に向き合っていた。


 『弱い自分』のケツを蹴り上げながら、

 ヘシ折れるほど奥歯をかみしめながら、

 必死になって、おのれの魂魄と向き合っている。



「あと一回だけ……あと一回だけやったら休む……だから……あと一回だけ……」



 休む気などサラサラない顔付きだが、

 しかし、『自分』をだますために言葉を巧みに使う。


 使えるものは、嘘でも使う。

 ごまかしでも、おまじないでも、スピリチュアルでも、

 なんでも駆使して、自分を突き動かす。


 そうやって、ここまでやってきた。

 まっすぐ――ではなかったけれど、

 頻繁に横道にそれてきたけれど、

 でも、どうにか、こうにか、

 前に進み続けることができた。


 オメガレベルという重荷を背負っても、

 だから、こうして、前に進むことができる。



「センエース。君は美しい……」



 心からの言葉を口にする。

 そんなオメガシャドーの視線の先で、

 センは、また、強く、きらめく。



「――閃拳――」



 回数を重ねることで、練度が増していく閃の拳。

 『今』の『肉体レベル』に適応していく。

 積み重ねることで、進化していく。


 センエースは終わらない。

 センエースのたたかいはこれからだ!




 ★




 センエースの『中』で、

 『最初の革命』が起こったのは、

 オメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクトが、

 1001回目の復活を遂げた時だった。


「……見える……」


 気力も精神力も、すべてが尽きかけているセンの目に見えたもの。

 ソレを、具体的な言葉にするのは非常に難しい。


 『何』というものでもなかった。

 ただ、『見えた』と感じた。

 それだけの話。

 けれど、ソレは、とても重要なこと。


 言っておくが、この革命は『奇跡の覚醒』だとか、『封印されていた力が目覚めた』とかそんなチャチなものじゃ断じてない。


 『必死になって積み重ねてきた全て』が、

 オメガレベルに適応しはじめたことで、

 今になって、ようやく、ほんの少しだけ実を結んだ。

 それだけの話。


 頭がおかしくなるほど繰り返してきた『地道な努力』と、

 どんな絶望を前にしても折れずに抗ってきた『覚悟』が、

 真に重なり合ったことで、

 『エゲつないほど頑丈な器』になってくれた。


 だから『オメガレベルの爆発的上昇という濁流』にも、

 なんとか耐えてくれた。

 それだけの話。


「これは……俺にしか見えない景色……美しい……」


 ――センは、すべての動きを止めて、

 今の自分に『見えているもの』の理解に努める。



「ギギギッ!」



 復活したオメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクトは、

 センの『活動停止』を、『生命活動の限界』と捉えたようで、

 ここぞとばかりに、猛攻撃をしかけた。


 無数の属性魔法攻撃と、ハエミサイルの絨毯爆撃。


 そんな、嵐のような弾幕に対し、

 センは、


「オメガ真眼蟲賢王・ウルトラインセクト……ハッキリ言うぜ、お前、軽いだろ」


 超越者の笑みを浮かべて、軽いテンプレをぶちこんだ。


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